HIT Thanks

□1000HITお礼小説
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「ありがとうございます十四郎さん。」


ただ弟をおぶって送るというだけなのに、ミツバは心の底から嬉しそうに言った。
その顔が俺には眩しくて、気恥かしくて思わずプイと顔を背けた。
それを見てミツバがくすくすと笑ったので、笑うなと睨む。


「睨んだって怖くありませんよーだ。」


俺の眼光を軽く流してニコニコと笑うミツバに俺は正直敵わないと感じた。

いつからだったかは分からない。
気が付いた時にはこの笑顔をもっと見たいと思っていた。


「さぁ、行きましょう?今夜は鍋なんですよ。」

「あ…ああ。」


呆けていた俺はミツバの声でハッと我に返り、てくてくと彼女の後ろをついていく。

街がもうすぐという所でふとミツバが足を止める。


「まぁ、紅葉が綺麗。」


今は秋なのだから紅葉が綺麗で当然だろうと思ったが、彼女がそう言うとそんな普通の風景も美しく映る。


「私、紅葉って好きなんですよ。」

「初耳だ。」

「言ってませんから。」

「……俺をからかっているのか?」

「いいえ。ただ…嬉しくて…」

「嬉しい?」

「総ちゃんと十四郎さんがいて、こんな綺麗な紅葉を見れて…なんだか幸せだなって思ったの。」

「紅葉なんて毎日見れるだろ。」

「あなたと見れたから嬉しいんです。」


やんわりと笑う彼女に思わず鼓動が鳴った。

紅葉が舞い散る中、やんわりと笑う彼女は何よりも美しく、儚く見えた。


「……買い物するんだろ。早く行かねーと店閉まるぜ。」


赤くなった顔を隠すように俯いてさっさと歩き出す。


「あ…待ってください!」


後ろから彼女がぱたぱたと小走りして来るのが分かる。


ああ…ちきしょう…一体何だってんだ…
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