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□さぁ、嗤いましょう。
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「ッ、ガァァ!!」
手始めに一番手前にいた奴の肩に手刀を加えると関節から鮮血が吹き飛んだ。肌は青いクセに中身は赤色らしい。グロテスクな組み合わせに嫌悪感を隠す必要もなく神楽は淡々と攻撃を打ち込む。
一人は腕を。もう一人は脚を。首を。胴体を。頭を。腹部を。内臓を――――。
「オイ」
黙々と敵の勢力を削がすことに集中していた彼女に再び声が掛けられる。耳に纏わり付く遺る青野郎ではない聞き慣れた、それでいて腹が立つ人物。
「エラク楽しそうなことやってんじゃねーか」
「・・・何か用アルか」
「ちょいと俺も混ぜて欲しいモンだぜ」
亜麻色に゙人殺しの眼゙――――この比喩表現は彼本人しか知らない単語なのだが――――とにかく神楽の前に現れた沖田総悟が音楽を聴きながらそう言う。
神楽は動きを止めることなく攻撃を仕掛け続ける。男達の悲鳴や肉の捩れる音や骨の折れる響きなどが混じり合う中でも会話はハッキリと両者の耳に届いた。
「てめーには関係ない事ネ。今忙しいから失せろ」
「そーいう訳にもいかねェからココにいるのが分かんねーのか節穴。見た所、コイツら煉獄関の分家にあたる違法賭博の組織でしてねィ。隊の中でも抹殺司令が下ってんでさァ」
そう言いながら戦っている場所からいま一つ離れた所に立って傍観者に成り切っている沖田がどうにも、先程の手首をへし折った天人がゆっくり喋る雰囲気に似ていた為に苛立ちは最高潮。神楽はあくまでも冷静なまま彼にも殺気を向ける。
「仕事なら早くするヨロシ・・・。言っとくがてめーの手助けする訳じゃねーからなサボり魔」
「手ェなんざ借りなくても俺一人で全て片付く。ガキは引っ込んでろ」
沖田はイヤホンを耳から外し、刀を抜く。鈍い光を放つ金属は空と同調するように重々しい灰色へと染まった。
「お、オイ!あれは幕府の犬の・・・・・・!」「真選組!?」「向こうも一人だ!」
此処でようやく彼の存在に殺四有無の連中が気付く。はぁ。短い溜息を一つ、次の瞬間の沖田の眼は獲物を狩るそれへと変化する。
「警察を見世物にしたら一興モノだ!取っ捕まえろ!」
いつの間にか初めに神楽に声を掛けた天人がその逆方向に曲がった毒々しい青色の手首をさすりながら叫んだ。連中の殆どが一斉に雄叫びを上げて沖田に切り掛かる。
「てめーらは俺が粛清すらァ」
面白いように天人が空を舞って汚い音を立てて落下する。グチッ、ドチャッ。湿り気を含んだ土が肉を包む。それでも倒すべき人数は多い。二人は背中合わせになり自らを囲う敵を見据えた。
「コレ、全部殺していいアルか」
「構わねェ」
短いやり取りも一瞬だった。
刹那。鮮やかな朱色と栗色はくすんだ青の群れへと勢いよく飛び込んだ。