Dream BSR

□竜の右目
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出会い








「すみません…」
「気にするな。」

左頬に傷のある男が自分よりも一回りか二回りも小さい少女の泥と傷まみれの足を洗っていた。

「……………」
「……………」

男と少女の間にぴちゃんと水の音だけが響く。

「あの……もう、大丈夫ですから…」
「まだ、手当てが残っている。」
「そんな、大した怪我でもないので…ほんと、大じょ「歩けるか?」
「あ、はい…多分。」

男は、少女が言い終わる前に少女よりも少し大きい声で言葉を発した。

少女は手を床に付け、片足をあげてゆっくりと立ち上がろうとしたが、傷のせいもあり、うまく立ち上がれず倒れそうになってしまった…

「あっ……」

どさっ

「あぶねーな…
気を付けろよ。」
「ご、ごめんなさいっ」

が、男が支えてくれたおかげで 少女は地面に倒れ込むことだけは、阻止できた。

「はぁ…しかたねーな」

男は少女の足を一瞥すると少女の背に腕をまわし、裏膝に腕をあてると、そのまま少女を持ち上げた。
いわゆる、お姫様だっこだ。

「キャッ!
ちょっ降ろしてください!!
私、重いですから!!」
「いいからおとなしくしていろ。
また、倒れたら危ないだろ。
あと、あまり耳元で騒ぐな。」
「でもっ…」
「重くねぇから。」
「そうじゃなくて………」
「じゃあなんだ?」
「え、と………………なんでもないです。」
「じゃあ、黙ってろ。」
「………………はい。」

少女は、この男には何を言ってもダメだと言うことを悟って、男の腕の中でおとなしくしていた。

男はすたすたと廊下を歩いて行くと、ひとつの部屋の前で止まった。
部屋の襖を開けると寝る準備をしていたのだろうか、布団が敷いてあった。
その布団の上に少女をゆっくりと降ろし、男はどこかへ行ってしまった。

しばらくすると、男は救急箱と思われるものを持って現れた。

「足、伸ばせ」
「はい…」

男の持っていた箱は、案の定救急箱だった。
その箱の中から小瓶と布を取り出した。

「少ししみるが我慢しろ。」

小瓶の蓋を開けると少女の足に布をあて、小瓶の中身をかけた。

「っ……」
「わりぃな。
だが、消毒はしとかねぇと…」
「は、い………っぅ」
「よし、消毒はこれでよし。」

救急箱の中から、手拭いと包帯を取り出すと手拭いをガーゼの代わりにして、少女の足に包帯を綺麗に巻いていった。

「あの……ありがとうございました。」
「だから気にすんなって。」
「でも…せめて、私に何か、できることはありませんか?」
「できること………」
「できることなら、何でもします!」
「なんでも…………
じゃあ…お前について教えてくれないか?
名前と……その、身なりについて。」
「……………はい」





「まず、私の名前は葛城ユエと申します。」
「ユエ?
珍しい名前だな。
南蛮人か?」
「いえ、日本とカナダのハーフ…混血です。」
「そうか、だから髪の色が…」
「はい。」
「で、その珍妙な着物はなんだ?」
「………多分…信じてもらえないと思いますが……
私は、今より…だいたい四百年以上先の未来……先の世から来ました。」
「四百年以上!?」

男はあまりにも信じられない言葉に目を丸くした。
一体、どうやって四百年以上も先の世から来たのだろうか。
それとも、先の世では、簡単に過去に行けるようになっているのだろうか。
そんなことを考えた。

「確かに、信じられない話だとは思います。
でもっ、本当なんです!!
お願いです!信じてください!」
「確かに…信じられねぇ話ではあるが、お前の目は、嘘をついている目ではないな。」
「じゃあ……」
「あぁ…お前のことを信じよう。」
「ありがとう、ございますっっ!」


これが、彼……片倉小十郎さんと私の出会いでした。
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