BLEACHbox

□命
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「平子ぉ」


「なんやねん、美里」


 愛しい声が聞こえる。
 素っ気ない返事をすると、むっとこちらに向かってきた池田 美里。

 俺と美里は付き合っている。
 そら愛しくて、かわええねん。


 隊首室で仕事してたけど、その手を止めて、席を立つ。そしてむっとしとる彼女を抱きしめたった。


 その体は小さくて、やっぱり愛しい。

 美里は俺の腕の中で、大人しゅうしとる。


「で、どないしたん?」

「平子に会いに行きた」


 へへっ、と無邪気に笑(わろ)た。


「ちゃんと仕事せなあかんやろ?」

 頭を撫でながら言うたら、「会いたかったんだもん」と言い訳をする。


 …………かわええなァ。


 三番隊の五席の美里は、文武両道でジマンなんやで。


 しばらく抱きしめて撫でとったら、


「隊長、いつまでイチャイチャしているんですか。僕が邪魔にしか見えないんですが」


 堅っ苦しい優等生クンの声が聞こえた。
 ……なんやねん、うるさいなァ。


「邪魔やで。俺と美里がイチャイチャしてねんのやから、空気読みぃ、惣右介」


「ここは執務室です。ほって置いたらいつまでもそうしていて、仕事なさらないでしょう」


「ええやろ、いつも頑張ってんのやから。ちょっとは敬ってみぃ」


「いつも敬っていますよ? 平子隊長」


 ゆっくりと口角を上げて笑う、副隊長の惣右介。
 顔には黒い笑顔が張り付いとって、まァ、はっきり言うて怖い。


 俺は渋々美里を腕から離し、また席に着いて筆を取った。


「ごめんね、池田くん。仕事が今日はたくさんあるんだ」


「あ……いえ、こちらこそすみません、お邪魔しちゃって」


「全っ然邪魔やないで! 惣右介、美里に謝らせたらあかんやろ」


「はいはい、仕事しましょうね」


「めんどォな部下持ってしもたわァ」


「何か?」


 またもにっこり笑う惣右介。
 あー、怖い怖い。
 肩肘を机について筆を動かす。
 すると、目の前に差し出された書類の束。


「これ、書類です。ウチの隊長が持ってけって」


 目を細めて笑う美里を見とると、いくらでも書類出来るわ……


「なら、書類仕事は早く終わらせて下さいね」


「心を読むな」


「そういう顔をされていましたよ」


 ホンマにこいつは……。
 眉を細めて美里からの書類を受け取ると、彼女は「頑張って〜!」と言い残して隊首室を出て行った。


「……行ってしもた……」


「隊長に会いたかったって、嘘でしたね」



「………………」
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