Blue Flame
□#5 伸び口調のミュウ
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「今回の件で一つ、貸しができたね。大佐」
「……君に借りを作るのは気色が悪い」
僕から言わせりゃ、薄く笑ってる大佐の方が気色悪いけどなぁ。
ため息をついて大佐がぼやく。
「良いだろう、何が望みだね」
「さっすが♪ 話が早いね。この近辺で、生体錬成に詳しい図書館か錬金術師を紹介してくれないかな」
「今すぐかい? せっかちだな、全く」
言葉とは裏腹に、二人のやり取りは慣れているものだ。
長年の付き合いってやつだね。
「オレたちは一日も早く元に戻りたいの!」
……元に戻りたい? どういうことだ? こいつらも異世界人かな。んな訳ないか。
「久しぶりに会ったんだから、お茶の一杯くらいゆっくり付き合いたまえよ。
そうだ、エリオもどうだい?」
「ついさっきまで男と勘違いしてた奴がよく言うねぇ。頭おかしいんじゃないの?」
「……可愛くないな、お前」
「うるさいなぁ。年上に向かってその口は何なのさ? 君、何歳?」
年下だってのに。年上は敬えという言葉を今だけ使わせてもらおうか。
「15だ」
「……………………………………」
嘘じゃなさそうってことはー、あーそうなんですね分かりますー。
わー胸張ってるしー。何故か自慢げー。きゃぁあ恥ずかしー。
「お前は?」
「いやちょっと言わないでおきますー」
「何でいきなり敬語!?」
「いや訊かない方が自分のためかとー」
「うぅう、やめろその目は! 言え!」
……んー、ない良心が痛むぜ。
「14歳」
あ、固まった。
だろうね、年下に身長追い抜かれてるんだもん。
「ところでアルフォンスは何歳?」
「あ、ボクも14。同じだね」
「おぉ、タメってやつだねー」どーでもいーけどー。
「あ……ありえん……」
おぉ、落ち込んでる落ち込んでる。
それを聞きながら笑う大佐が、資料を手に取った。
「あぁ、これだ。『遺伝的に異なる二種以上の生物を代価とする人為的合成』。
――つまり、合成獣錬成の研究者が市内に住んでいる。綴命の錬金術師、ショウ・タッカーだ」
「……合成獣」
キメラ。
初めて発するその単語は、少し不吉な感じがした。
……例えるならピカチュウとヒトカゲを混ぜて別の生き物を造るってことだろ、それは。
マサキはポケモンと合成されてたけど、あれはポケモンのこと。
あれだって偶然の産物かもしれないし、ポケモンと動物は違うんだろうし。
ショウ・タッカーとやらはどうしてそんなことをするんだろう。
僕は窓の外を見ながら思った。
「エリオも来るかね?」
「んにゃ、やめとく。それより大佐、どっか人目につかない広い場所って、心当たりない?」
大佐は「ふむ」と考えるそぶりをした後、
「錬金術専用鍛練所なら、私が貸し切りに出来るぞ」
「さっすが大佐。貸し切っといて」
「それは構わないが、何に使うのだね? 錬金術の練習か?」
「秘密。女の子は秘密が多いんだぜー。だぜだぜー」
エドワードが変な顔で僕を見てた。
無視した。あれ、僕って無視しかしてない気がする。