Blue Flame

□#7 生きるための事情
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 近頃、セントラルで火傷通り魔が勃発しているらしい。
 ロイがそれを知ったのは、親友のヒューズからの電話だった。

『ロイ、聞いてくれよぉ〜エリシアちゃんがよぉ今日もプリティなんだよぉ〜』
「……ヒューズ、私は忙しいんだが」
『奇遇だな、俺もだ!』
「……話を戻すぞ。火傷の通り魔と聞いたが……」
『あー、おう。今日だけでも四人が被害に遭ってる。それも、3〜6歳の子供だけ、な。
 まだ子供たちに直接的な怪我はなくて、あくまでシャツやスカートが焼けてるくらいだが。
 エリシアも外に出させないように気をつけてるぜ』

 その時、横で飴を舐めていた(ロイのサボりを見つけて貰った)エリオは、ふと強引に受話器を取り上げた。
 ロイが目をしばたたかせる。

「エリオ?」
『え?』
「どうも、ヒューズさんとやら」
『……誰だ?』

 ヒューズは訝しさを隠せない。
 エリオは、相変わらず面倒臭そうな顔をしながら言った。

「大佐から聞いてるだろ? ポケモントレーナーのエリオだ。
 ……その話、詳しく聞かせてもらおうか。ポケモンが原因の可能性がある」

 受話器の奥で、息を飲む音が聞こえた。

+++

「……まさか、こんな小さい子がポケモンを操るとはな」
「あっそ。被害者は?」
「あぁ、こっちだ」

 ヒューズ中佐……どこにでも居るようなお父さんって感じの男。
 ま、今はこっちが最優先だ。

 被害に遭ったのは子供。……ガキは嫌いなのに。死ね。死ね。
 世の中にはロリコンやらショタコンやら、そういう人種が存在するらしいけどさ。
 僕にはさっぱり理解できない。ふぇええ〜ん、とか泣いてる姿見たら殴り殺したくならないか?
 とにかく死ね。

 まぁ、話を戻して。

 一人のメスガキに微笑みかける。にこーって。うわ、自分が気持ち悪い。

「君、名前は?」
「あ……、リリア」
「リリアちゃん、熱くて痛かったねぇ。その時、誰か変なの、見なかった?」
「へんなの?」
「うん。人じゃなくて、変なの。見たことないような――そう、まるでお猿さんみたいな」
「猿?」「あんたは黙ってろ」

 僕はこのガキに訊いてんだよ。

「おさるさん……うん、へんなおさるさんみたよ!
 あのね、あかくて、えっと……あかくて……」
「いや、そこまで分かったら良いや。中佐、このガキの始末よろしく。
 僕は犯人を捕まえて来るから」

 情報収集が終わったらもう用がない。
 視界の横に中佐のマヌケな顔が映って消えた。

「へっ? おい、お前どこに」
「ポケモンは僕に任せろ。餅は餅屋だ」
「あーっと待ったエリオ!」

 泣き叫ぶガキたちをあやしながら、中佐が引き止める。何だよさっさと行かせろよ。死ね。

「一応護衛として、アームストロング少佐。頼む」
「承知した!」

 ………………、うわぁ。
 絶句した。

 ニドキングとかゴーリキーとかを人にしたような人が居たよ。カイリキーかむしろ。
 一軍のカイリキーを思い出す。こいつもそっち系の奴だろうか。
 あー見なかったことにしてぇわー。
 現実逃避したいわー。

 ……つーか護衛ってことは、いわゆるお目付役。中央の奴らからは怪しまれてる、と。
 ずーいぶん分かりやすいことでございますねぇ。

 ……はん、上等。

「少佐、ついて来るのは勝手だ。だが足手まといにはなるなよ」
「笑止千万! 我輩、二つ名『豪腕』の名に恥じぬ能力を持つ! 心配無用である!」

 ……あー。
 ……まぁ、良いか。言うべき時が来る時に言えば良い。

 今はまだ、その時じゃない。
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