Blue Flame

□#9 笑わない合成獣
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「こんにちはー。タッカーさん、今日もよろしくお願いします」

 アルフォンスが戸を叩く。タッカー、ね。

「タッカーってどんな奴?」
「どこにでも居るようなお父さんって感じだよ。
 ニーナっていう娘さんと、アレキサンダーっていう犬も居るんだ。
 ……奥さんには愛想つかされたみたいだけど」
「そういうことじゃなくて、研究。進んでるの?」
「……資料はたくさん持ってるみたいだよ」

 アルが目を反らした。おい質問に答えろ。
 つまり、資料だけ宝の持ち腐れで研究は進んでない、と。

 ま、今回僕が出向いたのは錬金術を知るためだし? 資料があるのは大歓迎だね。

 戸が開いた。

「ワンワンッ! ワンッ!」
「てめぇいい加減にしろぉお!!」

 ……何だこれ。グラエナ……じゃないな、色も毛並みも違う。
 これが犬ってやつか? くっそ、分からん。

 アレキサンダーか犬か知らんがそいつは、エドワードを押し倒して甘えていた。
 豆粒は迷惑そうだったが。

「おいエリオ、今失礼なこと考えなかったか?」

 無視した。

 続いて、「ダメだよぉアレキサンダー!」と声がしてメスガキが走ってきた。
 こいつがニーナか。

「あれー、お兄ちゃん、だーれ?」
「はは、こんにちは。……おや、そこの男の子は?」

 そして眼鏡をかけた男が――タッカーが、出てくる。
 ひんやりと、背中の芯が冷えるのを感じた。

「この子はエリオ。ちなみに女の子ですよ」
「えっ……」
「お姉ちゃん、だったの?」
「錬金術の資料が見たいらしいんです」
「あぁ、構わないよ。間違えてごめんね……あれ? エリオちゃん?」

 こいつ。この目を。僕は知っている。

 自分のことしか考えていない。

 自分のために全てを犠牲にする目。

 ……ふーん。

 まぁ、

「どうも。よろしくお願いします」

 僕とポケモンに被害が及ばないのなら、何しても良いよな。



 五秒で飽きた。訂正しよう、五秒で諦めた。

 錬金術? は、何それ美味しいの? 的な内容だった。
 難しすぎる。これを、大佐やら兄弟はあっさりしてるのかよ。

 ……すげぇな。

 ポケモンじゃなくて、人間なのに。

 新たな可能性を見つけちゃったぜー。

 ぱたん、と本を閉じる。
 兄弟は資料に集中してるし、タッカーは研究らしいし、ニーナはガキだし、アレキサンダーは犬だし。

 くっそう、絡みたくも絡まれたくもないけど暇だ。
 いつも暇なら特訓するんだけど、家の中じゃそれも出来ない。
 メスガキにポケモンを見られたら面倒臭いし。

「…………」

 寝るか。
 本棚に体重を委ね、僕はうとうとと意識を沈ませた。
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