献上物

□杏仁様 4700hit 「エリオが大佐にデレる話」
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※大佐がおかしい
※大佐ファンは阿鼻叫喚
※あれ? 大佐ってこんなのだっけ?
※これは大佐じゃない
※後悔したくなかったらブラウザバック





【変態ではない、ヂェントルマンだ】


 朝、エリオの髪を解くのは、彼女の相棒のカルトの役目である。
 それは昔からの習慣であり慣習で、彼らにとっては当たり前の行動だ。
 が――、それに異を唱える者が居た。

「私だって解きたい!」

 次の瞬間、ロイの腹にエリオの渾身のパンチが叩き込まれた。

+++

「……え? 何どうしたの大佐? 馬鹿なの? 死ぬの? むしろ死んで?」

 と、砂糖に群がる蟻を見るような目のエリオ。くっ……、少し言葉が足りなかったか。
 カルト君も、『何だこいつ? 実はそういう趣味か? 髪フェチか?』と言いたげに私を見つめている。……誰が髪フェチだ! ……自分の想像に突っ込んでどうする、私。

「ていうか何いきなりキモいキモい、うわ鳥肌立ったマジキモいって死ね」
「いや、単なる好奇心だ。気にするな」
「『大丈夫だ、問題ない』みてーに言うなエロイ・マスタング」
「おや、ではカルト君。私に彼女の髪を扱わせてくれないか?」

 にっこり、と微笑んで交渉する。彼は手に持った櫛を見、断れビームを目から発射するエリオを見下ろした。

(あー……ロイは、エリオとスキンシップしてぇのかな……。まぁ最近はライやらアオイやらに構ってたからな。
 大人だから我慢してほしいものだけど、たまには人間同士の時間もあるべきだよな……)

 そして、私に櫛を渡した。

「――どぅおいっカルト! 貴様ぁあ裏切ったな!」
『じゃあロイ、うまくやれよ』

 よぉおっし。
 カルト君……、君、最高ではないか。
 彼は私に目配せし、二階に去った。おそらく、ライ君やアオイ君を宥めに行ったのだろう。

「畜生カルトの野郎……いつか耳元で大音量の音楽聴かせてやる……」と嫌がらせを呟いているエリオの髪の毛に触れる。

 少女のものとは思えない、白銀の毛髪。窓から差す光を受け、それらは眩く輝いている。
 半分まで解かれた一房は、細く、どこか甘い匂いがした。

「大佐ぁあ……」
「レディがそんな怨恨の籠もった声を出すんじゃない。テロリストか、君は」
「チッ…………雑に扱ったらぶっ殺すから」

 諦めたのか、エリオがふんぞり返って鼻息荒く座り直す。
 彼女は、自分が昏睡していたので皆に迷惑をかけたと思っている。時間の都合でそれを弁解するタイミングがなかったのだが……、フッ。
 しなくて良かったな。

 髪の先の方を櫛で解いていく。それから、櫛の先端は根本の方に近づいてゆく。
 その度に、白い淡い小さな光が、一瞬だけ残滓として残る。けれど、目を見張った時にはもう霧散していて。

 それはどこか、日常に似ている。
 毎日に満ちた神秘や不思議が、たわいもない世界に綴られて。だけど、改めて注目した時にはもう遅く、取り戻せない。
 遠いな、とその素晴らしさを嘆いた。
 このどす黒い世界に、日常は存在しない。毎日起こる殺人、テロ、止まらない犯罪。

 いつから――、いつからこの世界は狂っているのだろう。

「大佐?」

 はっ、と意識が戻る。櫛の手が止まっていた。
 エリオが怪訝な顔を見せる。

「――あぁ、すまない」
「終わった?」
「いや……、少し待っていてくれ」

 思いつきが行動を開始させ、楽しみが行動を加速させた。
 確かこの辺に、あぁ、あった。

 手にしたのは髪ゴムだ。以前、女性が家に泊まった時に置いて行ったものだ。
 色は蛍光色の桃色。白い髪にはよく映えた。

「何する気? 結ぶの?」
「そうだ」
「……今度、髪切ろう」
「やめたまえ。勿体ない」

 髪の毛は胸の辺りまで伸びている。それくらいなら、まだ充分伸ばして良いだろう。
 手慣れた手つきで結んでいると、それに対する疑問が飛び出たので答える。
 女性の扱いは慣れているからね。と言うと、何故か無言になっていた。

 できた。一般的なポニーテールだ。
 少し離れて見る。

 …………………………ぐは。

「大佐? うわ鼻血出してるキメェ」

 うなじが……こんなにも破壊力があるとはな……。
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