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□normal liar
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 私の従兄弟こと天野(今は枝瀬だっけ)××は田舎に住んでいるけれど、もし彼が箱庭学園を目の当たりにしたらどう言うんだろう。「僕とまーちゃんのラブには負ける大きさだな」とかノロケるのかね、嘘だけど。
 あー私だったら平凡に、「大きいですね」とでも言ってみるか。普通だしね。しかし無駄にでかいなこの学園本当に。
 職員室どこだオイ。よし、適当にさが――お、生徒っぽい子を発見。そこそこ過負荷っぽい、きゃわゆい子じゃないか。私はロリっ子好きなんだよね、嘘じゃない。
 頭に回転アホ毛を備え、菓子パンをくわえたロリっ子が通りかかった。「さーっせーん」と無難に声をかける。
 ロリっ子はチラリと私を一瞥し、ニヤニヤと笑いながらその場に止まる。駆け寄りながら言葉を選び、発した。

「私、転校生なんだけどさ。職員室がどこにあるのか教えてくれない?」
「んー……あひゃひゃ☆ 良いよん、一年生?」
「うん。見たところ同級生かな」
「へーえ。お名前は?」
「永久草囃」
「へー。あたしは不知火半袖☆ んじゃ永久草、ついてきて〜」

 おぉ、初っ端から苗字呼び捨てとはフレンドリーな子だねぇ。不知火さんは菓子パンを口に頬張りながら歩き出した。
 ……それにしても。
 随分めんどくさそーな学園だね。
 何だか、私を見張っている奴が多すぎる気がするし。けしからん、私はただの普通で普通な普通なのに。嘘だけど。気持ち悪いだけの人間です。

「ねー不知火さん。ここの学食っておいしい?」
「うん、かなりイケる味♪ あたしのオススメは親子丼だね!」
「ふむふむ。じゃ食べてみたいな」
「ところで、永久草は何組?」
「1組。もーちょっとで10組になるかもしれなかった逸材ですわよ」
「10組っていうと、特別普通科?」
「うん」
「あ、ここが職員室だよん☆ んで、あそこが理事長室、あたしのお爺ちゃんのお部屋。好き勝手出入りして良いから〜」
「へー、不知火さんって理事長の孫という学園モノでも無敵に近い立ち位置だったんだ」
「……なーんか永久草って、マイナス方面にも向いてるよね」
「ん?」訊き返した。けど、内容は聞き取れていた。
「あひゃひゃ。じゃ、頑張れーい☆」

 答える気はなかったらしい。そして、小さい背中が消えていくのを見届けながら、呟いた。

「正解だよ」

 私は異常であり過負荷であり特別であり普通であり零だからねぇ。
 嘘だけど、で片づけられるようなことでは……ないんだろうなぁ、やっぱり。
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