Blue Flame
□#4 発砲する部下
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「つまり、こういうことかね?
旅をしていると夜の間に財布を盗まれてしまった。そして放浪しているとこの町に着いた」
「そ。童顔の割には意外と、意外と理解力あるんじゃん?」
「……君は童顔に恨みでもあるのかね」
「意外とって二回言ってましたね」
「ハボック、……さんも一応あるね、頭脳が」
「いやオレ人間だから! 頭脳あるから!」
「前見て運転しなさいな」
「うぉ危ねっ!」
少し車内が揺れるけど、すぐに元に戻る。
時間を訊くと8時と返ってきたので、時間や年月の感覚もおそらく変わらないだろう。
そもそも何で僕は夜中に拉致されてるんだ。こいつらが軍人の皮を被った悪党だったらどうしよう。
ま、それは心配ないな。これでもそこら辺の大人よりは強い自信あるし。
本来は二軍であるチルやエネたちだって、ジムリーダー程度の力は持ち合わせている。
こいつらが悪者だったら、の話だけど。
本当のことを言ってないことは、自称大佐は何となーく気づいてるみたいだな。
ま、話す気もないけどー。
窓の外に、やたら大きい建物が見える。
あれが東方司令部かな?
腰のボールに触れると、カタリと動いた。
まだ、大佐と少尉にポケモンのことについては話してない。
見せたらどんな反応をするかなぁ、なんて思いつつ僕は車から降りた。
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部屋の戸を開けると、ピリピリとした空気が僕を襲った。
同時に発砲音。……発砲音? の後に拳銃の弾が僕の頭上を通過する。
「……ちゅ、中尉」
「パトロールを許可したのはハボック少尉だけと思われ……あら?」
威圧感のある声の持ち主(おそらく中尉)は、僕の姿を見ると構えている拳銃を下ろした。
横の童顔がホッと息をつく。
後ろ髪を綺麗に留めた、凜とした女性だった。
おそらく僕が男ならプロポーズしているんじゃないだろうか。
「彼は町を歩いていた少年だ。保護してきたよ」
「……そうですか。あなた、名前は?」
「エリオ。おねーさんは?」
「私はリザ・ホークアイ。よろしくね」
「どーも」
「エリオ君、今日はもう遅いわ。ゆっくり休んでいきなさい」
「あー、その点で提案があるんだけど」
気怠く手を挙げると、部屋中の視線が集まる。
「僕さぁ、何でもやるからここに置いてくれない?」
「えっ?」
リザさんが驚く。
「僕ねぇ、夜営してたら誰かに荷物盗まれかけててさー。
お金がなくなったの。だから雇ってくれないかなー」
おそらくこの中で一番地位の高い(関係は別として)童顔に目を向ける。
まぁ期待はしてない。駄目で元々、もしくは他を当たる。
「良いだろう」
ほらやっぱり駄目って、……ん?
「うわ……あんた馬鹿じゃねーの? 見ず知らずの人間を扱うとかマジないわー」
「見ず知らずの、何の恨みもない人間を見捨てる程、私は鬼ではないよ」
大佐がそう言って笑う。
んー。
アレだね。こいつら、甘いな。基本的には甘い。
けど、今は好都合だ。
「んじゃ改めてどーも、エリオでございます」
僕は頭を下げた。