立海
□一世一代の
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我が校は、男子テニス部がとても有名だ。
王者立海、とか言われてる。
まあ私には関係ないんだけども。
関係なかったんだけども。
「神木、今日ヒマか? ヒマなら病院まで行って、幸村にこれ渡してきてくれないか? ここ最近のプリント」
「……何故に私?」
「神木がヒマそうだったから☆」
「死ね」
「はい先生に向かって死ねって言った〜。罰としてこれ渡してこい。断ったら内申書に書いちゃうぞ☆」
「あーもう! うぜーよマジ殺してぇ」
「いってらっしゃーい」
思い出しても腹が立つ!
去年もその前も同じクラスで、また今年も同じクラスだった幸村精市という男子生徒は、今年に入って難しい病気とかで入院している。美人で儚げで、それでいて病気にかかっているなんて、なんというか、小説とかの世界だったら萌えるシチュエーションなんだろうけど、現実だったらとてつもなく可哀想だ。
それに、彼は確かテニス部の部長だったはず。
とっても強くて、中学テニス界では知らない人はいないくらいに有名。
さぞかしテニスが好きだったんだろう。
自分の好きなことができなくなるとか、そりゃ悲しすぎる。私だって、病気だからって好きなことできなくなるのは嫌だ。
というか、そんなことよりも。
どうしてあんまり話したこともないクラスメートにプリント届けに行かなければならんのだ。学級委員でもない私になんてことをさせるんだ。今日は友達と遊びに行こうかなと思ってたのに。
そう思っていても渡された地図通りに病院へ向かう私って、本当に内申に変なこと書かれたくないんだな。ただでさえ成績がそんなによくないから、これ以上問題児扱いされるのは嫌だもんね。まあ今も問題児扱いなんて受けてないけど。