Gift

□CANDY
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「口がー・・・寂しい」


放課後の教室、日誌を書きながら呟いた。

「なにそれ、キスして欲しいの?」
「ちがうよ!」
赤司くんが変なことを言うので思わず叫んでしまった。
実はさっきまで飴を舐めていたのだ。なくなると妙に寂しい感じがする。

「赤司くん飴もってないー?」
「あるよ」
ポケットからいちご飴が出てくる。
「ちょうだい!」
「どうしようかな」
「えーっ」
そこまで言っといてもったいぶる?
だいたい赤司くんがいちご飴ってなんか想像できないよ!のど飴とか塩飴とか舐めてそうだよね!!

「シャララ☆、全部口に出てるぞ」
「えっ!?嘘っ!?」
「本当だよ」
「ご・・・ごめーん!!でも本当のことだから、飴ちょうだいよ」
「それでなんで貰えると思うかな・・・」
だって正直者だもん?

「まぁ、いいや。あげるよ飴」
「わーい!」

赤司くんは私に飴を差し出す。


―――のではなく、なぜか自分で袋を開けて、口にいれた。


「え!?赤司くん何してんの!?くれるんじゃないの!?」
「だからあげるって」
言ってることと、やってることが全然一致していませんけど!?

「ああ・・・飴ちゃんが・・・」
「まったく。人が言ってること伝わってる?」
「全くわかんないよ・・・」



「はい」

「え・・・」
赤司くんの唇と、私の唇が重なる。

キス?


唇が離れる。



「口、これで寂しくないでしょ?」
「何言って――・・・!」

“甘い―――イチゴの味?”

私の口の中には、いちご味の飴があった。


「なんで・・・えっ!?」
一瞬困惑して、やっと理解する。


「タダであげると思ったら大間違いだよ。日誌出してきてあげるから、帰る準備しときなよ」
そう言って、赤司くんは教室を出ていった。

「なっ・・・」
急に顔が赤くなるのが分かる。


教室に残ったのは
一人の少女と、ほんのり香る

甘い香り。

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