紫色の恋

□帰還
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『初めまして。私の名前はレイラ。
キミの名前も教えてくれ。』


「ボク…ボクは…」







フッと途切れる懐かしい記憶。
忘れられない、忘れもしない懐かしい記憶。
何十年前のたった1日だけの記憶なのにこんなにもボクの脳裏に焼き付いて今も離れない。


幼い頃にボクに課せられた毒人間というレッテル。
孤独なボクにあの人は独りじゃないと、馴れ合うのは怖くないと教えてくれた人。
ボクの毒が唯一効かなかった人。



彼女は今どこにいるのだろうか。
一龍会長の古い友人とは聞いたのだが、それ以上は会長は教えてくれなかった。



ボクは何十年も経った今もあの人を探している。







だって彼女は…








ボクの初恋だったのだから。
「さて…今日も占いの仕事に行くか。」


グルメフォーチュン、占いの町。
ボクが占いをするには訳がある。

いつか、いつかきっとあの人に会えるかもと思っているから。


「まぁ、現実はそう甘くないんだけどね…」

と1人ポツリと零す。
何年も占いの仕事をして来たが、彼女の手がかりは全くない。
手がかりが無ければ流石のボクもお手上げだ。



「諦めは…しないけど。」

とまた小さく呟きながら、占いの店を開ける。



「さて、今日も頑張ろうか。」





店を開けた途端に出来る人集り。
1人1人を占いながらも無意識に探している。


だが来るのはやはり仕事の事。恋愛相談ばかり。



「(なんだか今日はやけに疲れるな…)」




あ、でももうそろそろ猛獣が出る時間か。
猛獣が出る時間になったら帰ろう。



早々に店を閉めて家に帰ることにした。
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