君の瞳に映るもの
□9.無自覚な女神様と突然の閉幕
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ルリの病気が治った日の夜、村では盛大に宴が開かれていた。
部外者であるゲンも村の中に無理やり引き摺りこまれておりウンモから酒を勧められていた。
酒が苦手なのか飲みたくないだけなのかはわからないがコーラ専門なのでと断っている姿を見て少し離れたところで酒を飲んでいたスイレンはやれやれといった様子で近づいた。
「お酒は嫌がる人に無理やり飲ませるものじゃないよ、これは私がいただきます」
「わーお、スイレンちゃんてば助け方がゴイスーにイケメン」
わざとらしく惚れ惚れしちゃうとゲンが告げれば君はこっちでしょとコーラを渡された。
驚きのあまりコーラとスイレンを交互に見るゲンがなんだか可愛くてクスリと笑ってスイレンは酒を煽る。
ちなみにこのコーラは宴でゲンに飲ませてやれと千空がひそかに作ってスイレンに預けていたものだ。
「女神様じゃん」
「君の言ってること時々意味わかんないんだけど」
「これは惚れちゃうって」
「チョロ過ぎない？」
「え〜、ドイヒー」
結構本気なのにと泣き真似をするゲンの発言は誰が聞いても冗談にしか聞こえない。
「そういえば君は私の顔見ても普通に接してくれるね」
「スイレンちゃんみたいな美人の顔ならずっと見ていたいくらいだけど」
「…マジか、千空の言ったとおりだった」
スイレンはいつぞやのゲンなら喜んで顔を見に来るんしゃねえかという発言を思い出し、千空は預言者なのだろうかと思った。
「むしろなんで隠してるの？」
「まともに目を合わせてくれない人が多いから」
「あー、そういう…」
時々邪魔になって結んでいることはあるが基本的にスイレンの顔は前髪でほとんど隠れていることが多い。
今も前髪で顔が隠れていてかろうじて鼻と口だけが見えている状態だ。
ゲンはスイレンの前髪を耳にかけてマジマジと見つめる。
「村一番の美人なのにもったいない」
「いやいや、村一番の綺麗どころならあそこに3人もいるでしょ。他にも可愛い子がたくさん、ルリにコハクにスイカに」
「みんな可愛いけど、次元が違うっていうか…」
「君の方が綺麗な顔してると思うけどなー、傷が残らなくて本当に良かった」
「もしかしてスイレンちゃん、お酒を飲むとイケメン発言しか出来なくなる感じ？」
ゲンは複雑そうな顔で少女漫画のヒロインになった気分とつぶやいているが意味が分かっていないスイレンは首を傾げてから更に酒を煽る。
「…飲むペース速くない？」
「水と変わらないよ。飲んでみる？」
「いや〜飲んだらマジ話できなくなっちゃうしね。村がやっとまとまったんだから伝えないと…」
勧めてみたがやはり酒は断られてしまった。
残りを飲み干し見張りをしている金狼と銀狼に差し入れでも持っていこうかと考えていたスイレンは橋を渡ってくる千空の姿が視界に入った。
「あー、聞かせてもらおうじゃねえかメンタリスト。何があった、司帝国に」
千空の問いにゲンはさっきまでのふざけた様子から一変し真面目な表情でうっすらと口元に笑みを浮かべた。
「来るよ、司ちゃんたちが」
そのゲンの一言で周りの空気がピリついた。
ゲンの話によると司は大人数でこちらに攻めて来ようとしており、石化復活液とやらを使って石化している人物たちを次々と復活させているらしい。
そして、その中でも司か最近復活した氷月という人物が来てしまうと全員で逃げるしかなくなるというのだ。
「俺が潜入して手引するよ〜ってことにして一足早く出発したんだけどね、時間稼ぎもそうそう長くは…」
「みんなー、敵だよおおお！！！」
宴の会場から居住区へと続く橋の向こう側から銀狼が叫んでいる。
楽しい宴は急に幕を閉じることとなった。
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