Z E R O B O K U
□No Title
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今日何度目かも分からない溜息を吐く。
俺がいーたんにあんなことをしてしまったのは、冷静になって考えれば恋とかそんな感情からの行動だったのかもしれない。
とか考えたり。
「つーか、俺、乙女……?」
うわ、気持ち悪い。
そんなことより。
……絶対、嫌われたじゃん。
俺はもう一度溜息を吐いた。
「………あ」
………え?
「い…いーたん」
「零崎。どうしたの玄関の前なんかに座り込んで」
「いや、なんとなく…入ったら迷惑かなって思って」
「そっか。上がっていくよね?」
「は?」
「…え?帰るの?」
「や、上がる、上がります」
すぐに追い返されるか逃げられると思ってた。
「…どっか行ってたんだ」
「あ、うん、ちょっと」
「…ふうん」
「座ってていいよ」
「ん」
「…………」
「…………」
あ、間。
今まで会話が途切れたことなんてなかったのに。
……あのせい、か。
「あの、いーたん」
「零崎」
声が重なる。気まずい。
「……どうぞ」
「…………その、この前のことだけど」
「……ん…」
「………悪かった、ごめん」
「いや、僕も…ごめん、あんなことさせちゃって」
「気にすんなよ」
「……ごめんね」
「………」
謝らなきゃいけないのはこっちの方なのに。
俺は咄嗟に土下座する。
「……ごめん、止まんなくて。ほんと、ごめん」
「…………嫌じゃ、なかったから」
「…………え?」
顔を上げると、いーたんは少し苦しそうな顔をして床の一点を見つめていた。
「え、……え?」
「…………ごめん、気持ち悪いよね。零崎は…手伝ってくれただけなのに」
「そんな……!」
「あ………」
俺が勢いよく体を起こしたせいで、いーたんと顔の距離が近付く。
「……あ、ごめ」
「………なんで」
そのままいーたんは軽く泣き出す。
「謝んないで…」
謝られると辛くなるから。
掠れる声でそう言う。
気付けば、俺はそんないーたんを抱き締めてしまっていた。
「俺、多分いーたんのことが好きなんだ」
「………え」
「……だから、ごめん。この間のもいーたんのためとかそういうのじゃなくて、なんか止まんなくて。ごめんな」
「謝んないでって……零崎」
「ごめん」
「零崎っ……」
「好きなんだよ」
流れるように、自然とその言葉が出た。
「俺の方こそ、気持ち悪いよな」
「違っ……!だって僕は…っ……」
「……?」
「…………零崎のこと、好きだから……多分」
腕の中のいーたんの体に力が入って、かたくなっていくのが分かる。
「零崎となら、あ、ああいうことも出来る、っていうか」
「嘘だ」
「…本当だよ」
「嘘」
「本当だってば……っ……」
回した腕に力を込める。
目を瞑ったまま半ば強引にいーたんにキスをすると、いーたんの体から力が抜けた。
「…嘘だろ」
いーたんは何も言わずに、目を伏せたまま俺の腕をぎゅっと握る。
俺はいーたんの肩を掴んで離すと、しっかりと向かい合った。
言葉が勝手に出てくる。
「………俺と、付き合ってくれる?」
いーたんは恥ずかしそうに唇だけで小さく笑うと、俺を真っ直ぐに見つめ返した。
*
友情→愛情な感じで。