Z E R O B O K U

□LAST.
4ページ/6ページ

 




「………じゃあ、そろそろ行くよ」

零崎が僕の頭をくしゃっと撫でた。




……ああ、もう。

何で、僕は零崎の事がこんなにも好きなんだろう。



行かないで。



その一言さえ、言えない。


零崎にだって事情がある。

一賊の殆どが居なくなってしまった今、零崎のやらなければならない事は沢山あるんだろう。



僕は……零崎を縛る鎖にはなりたくない。




「………零崎……」
「……ん」

言葉が詰まって、出てこない。



これが別れなんだと、今更僕は感じた。






人が得る事は全て同じだ。

正義にも悪にも、善良な者にも清い者にも清くない者にも―――一つの終局がある。



僕にとっての終わりは―――零崎との別れだ。





「ふ……っ……」

僕の瞳から、大粒の涙が零れた。

「……いーたん…?」
「好き……だよっ……」


想いが溢れて、止められそうにない。

想いが、重い。


「好きだよ……!……ねぇ、好きなんだよ………。零崎っ……」
「……うん」
「……あ…あ゙っ……」

愛してる。

誰よりも誰よりも。





















―――だから、君とは別れよう。


僕が愛している、君だからこそ。



ねぇ。
君を縛り付けたくはないんだ。





零崎の腕が、僕を抱き寄せた。

「いーたん………好きだ。愛してる」
「……っ……」


僕たちは深く、深くキスを交わした。

何度も、何度も。



僕は、涙を溢れさせるままにして、零崎に言った。

「……行って、零崎」
「でも……」
「ねぇ」



行って。



「………解った。……いーたん」
「………?」
「元気で、な」
「……ん」
「病気とか、なんなよ」
「………うん」


零崎は泣きながら笑って。



「俺の事、忘れんなよ」
「……っ……!忘れたりなんかしないっ……絶対っ……忘れない………!!」
「……ん。愛してるぜ、いーたん」

零崎はもう一度僕にキスをして、僕に背を向けた。

「あっ………」


零崎は振り返らない。


「零崎もっ……僕の事、忘れないで!」


ひらひらと、背を向けたまま零崎は僕に手を振った。







これが、僕たちの最後。







…………零崎の姿が見えなくなった。







 
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ