Z E R O B O K U
□クリスマス
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PM.23:45
「師匠、どうしたですか?ずーっと窓の外ばかり挑めて」
「……………眺めて?」
と云うか何と読めばいいんだそれは。
「……んー……ちょっと、ね」
「彼氏を待ってるんだよなー」
「黙っててください哀川さん」
「はいはいラブラブでよろしいことで」
軽く脇腹を小突くと、哀川さんはにやにやしながら姫ちゃんを連れて離れた。
12月24日。
クリスマスイヴ。
「…………我ながら、戯言だよな」
さっきからずっと、あいつを待ってるなんて。
来るはずないのに。
きっと、クリスマス、なんて単語すら頭にないだろう。
思わず吐き出した溜息が夜空を白く染める。
馬鹿みたいだ。
「いー兄」
「……萌太くん」
「ちょっと外に出てみませんか?」
「え……」
萌太くんの笑顔に誘われて、僕は階段を降りた。
「…………あれ、萌太くん?…どこ行っちゃったんだろ………。外出たのかな」
先を歩いていたはずの萌太くんが見えない。
僕はドアノブを回した。
「う……わ………」
寒い。
萌太くんはどこに行ったんだろう。
「萌太く………わっ」
突然、背後から抱きしめられる。
「な―――」
「 」
ふいに僕の耳に落とされた、愛しい声。
PM.23:59
クリスマスまで、あと一分。