Z E R O B O K U
□SS
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[林檎飴]
友に連れられて何となく来た夏祭りだけど、その友が急用が出来たとかで帰ってしまった。
「……はぁ」
僕は一つ溜息を吐く。
帰ろう。
僕は後ろに体を返した。
「………あ」
………何で。
そこには、林檎飴を両手に持った殺人鬼がいた。
「………零崎、何してんの」
「……いーたん!かはは、奇遇だな。やっぱ運命」
「馬鹿言わない。一人?」
「おう。お前もか?」
「連れが帰っちゃってね」
「そうか」
零崎はにっ、と僕を見て笑った。
「じゃあ俺と遊ぼうぜ」
「……は?ちょっ……零崎、僕もう帰………んっ」
言葉を紡ごうとした僕の唇が零崎の唇で塞がれた。
「いいじゃねーか祭りの時くらい。楽しもうぜ。かはは」
零崎は僕の手をとって歩きだす。
「………仕方ないな」
僕も零崎に引かれて歩き出した。
口の中は、甘い林檎飴の味がした。