B O K U I Z U
□ぬくもり
1ﾍﾟｰｼﾞ/2ﾍﾟｰｼﾞ
―――消えた温もりは､何処へ行くのだろう｡
ちゅっ｡
と､出夢くんの唇が僕の頬を撫でてすべっていった｡
そして､出夢くんは瞳を閉じた｡
僕の腕の中で､冷たくなっていく｡
…………冷たくなっていく｡
｢………どうしても駄目かな｣
｢っあー！おにーさんッ！駄目なものは駄目だって！この身体は僕のものであって僕のものじゃないんだからさ!!｣
……筋が通ってないよ出夢くん｡
僕は出夢くんの腰にやっていた手を離した｡
｢……っはー……びびった……やられるかと思った……｣
｢……出夢くんが嫌ならいいんだけど｣
｢…………｣
出夢くんは僕の目をじっと見つめた｡
｢どうしてもやりたいのか？｣
｢やりたい……って云うか……やっぱ､出夢くんの事愛してるから｣
―――ぐしゃ
と云う､同じ台詞を前に言った時､聞いた音は鳴らなかった｡
珍しい事もあるものだ｡
｢出夢くん？｣
僕は黙って俯いた出夢くんに声をかける｡
｢そりゃ……僕だっておにーさんの事は好きだよ｣
｢………出夢くん……｣
――可愛い……っ……
｢でもさ……僕だけの身体じゃ､ないんだよ｡今は………理澄は居ないけど……｡なぁ､これ､理澄が僕に残していったものなんだよ｣
――理澄ちゃんの､形見｡
二人の身体は違うけれど､結局､二人は一人で､一人は二人なんだろう｡
｢ん……｣
僕は短くなった出夢くんの髪を撫でる｡
｢うん｡僕は気にしないからさ｡僕は出夢くんの身体が好きな訳じゃない｡……出夢くんの大切な身体だもんね｣
｢僕の――…｣
｢出夢くんの､だよ｡出夢くんと――理澄ちゃんの身体だ｣
｢おにーさん………｣
出夢くんが僕に抱き着くように覆いかぶさる｡
……あの……
我慢できなかったらどうしよう………｡
｢………出夢くん？｣
｢僕､おにーさんの事好きだよ｣
｢うん｣
｢愛してる､よ｣
｢うん｣
僕も､同じだ｡
君が､好きで好きで｡
｢寝よっか｣
｢ん……｡おにーさんっ｣
出夢くんは僕の胸に自分の顔を埋めた｡
そっと､唇が重なり合う｡
お互いの身体を､固く､固く抱きしめて眠った｡