H I T O I Z U

□ss
1ページ/4ページ

[伝えたい音]


ちょっと躊躇いながら、僕は緑のボタンを押した。

「………はい」

短く応える、君。



「―――出夢?」
「……零崎、久しぶり。ぎゃははっ」
「……おう。何だ?どうかしたのか?」

………何かあったって訳じゃないけど。

「何かないと電話しちゃいけないんだ?」

僕は少し拗ねて言った。

慌てた零崎の声が受話器ごしに聞こえる。

「んな訳じゃないけど……。何かあったのか?………声、暗いぜ」



どくん


胸が鳴った。



「………零崎」
「ん?」
「―――……」



ただ、声が聞きたかっただけ。



「―――……なんてな!ぎゃははっ、何か僕らしくないよな!!じゃあな零崎っ!」
「え…あ……ちょ!出夢っ!!」



僕は電源ボタンを押した。


「ふー…っ……」

長い溜息。

携帯を、そっと唇にあてる。


―――……信じたくないなあ。


いつの間にか、手にとる携帯。


さみしくて眠れないほど、君に会いたい。







伝えたい音/19 より

 
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ