H I T O I Z U
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[伝えたい音]
ちょっと躊躇いながら、僕は緑のボタンを押した。
「………はい」
短く応える、君。
「―――出夢?」
「……零崎、久しぶり。ぎゃははっ」
「……おう。何だ?どうかしたのか?」
………何かあったって訳じゃないけど。
「何かないと電話しちゃいけないんだ?」
僕は少し拗ねて言った。
慌てた零崎の声が受話器ごしに聞こえる。
「んな訳じゃないけど……。何かあったのか?………声、暗いぜ」
どくん
胸が鳴った。
「………零崎」
「ん?」
「―――……」
ただ、声が聞きたかっただけ。
「―――……なんてな!ぎゃははっ、何か僕らしくないよな!!じゃあな零崎っ!」
「え…あ……ちょ!出夢っ!!」
僕は電源ボタンを押した。
「ふー…っ……」
長い溜息。
携帯を、そっと唇にあてる。
―――……信じたくないなあ。
いつの間にか、手にとる携帯。
さみしくて眠れないほど、君に会いたい。
*
伝えたい音/19 より