H I T O I Z U

□風邪
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「おーい零崎、遊びに来てやったぞー」

部屋の中からは何の物音も聞こえない。

「んんー?」

出夢は遠慮も無しに部屋に上がり込む。

「零崎ー?いねーのか?……中で死んでたりしてな。ぎゃははっ」

ふと足が何かに触れる。

「んあ?………って…」



人識の、頭だった。



「……おお。もしかしてマジに死………………おーい零崎?」

出夢はぐりぐりと人識の頭を踏み付けた。

それも、力いっぱい。

「い…てぇ……」
「お?」
「足、どかせ……出夢っ……」
「ぎゃははっ、生きてたよーつまんねーの!何寝てんだよ零崎」
「……………」


返事がない。
ただの屍のようだ。


「……じゃなくて。おーい」


出夢は足を押しつけたまま声をかける。

「……うわ……熱っ……零崎熱あるじゃん!ぎゃはっ、やっぱり殺人鬼でも風邪ひくんだな」

刹那、人識の腕が出夢の首にかけられた。

人識は出夢の耳元に唇を近付けると、

「ベット………」
「はぁ?」

ぐったりとする人識。

「何で僕が……あーあ………」







「はい、あーん」
「………ん」

人識は素直に口を開けた。

「ぎゃははっ、どうだ、僕お手製のお粥、おいしい?」
「ん」
「………零崎じゃねーみてー…。つーかっ…素直すぎるっ!」
「出夢ぅー」
「…なに?」
「もっと」


っか……わいいっ…


「…はい」
「うまー」
「うわ…………」


……ヤバい、かも。


出夢は立ち上がると、空になった皿をさげた。

「零崎、他に何かある?」
「ん………出夢」
「んー?」
「ぎゅってして」
「……………」



決めた決めたたった今決めた。



襲ってやる。


……て云うかもう限界だ。



「零崎っ!」
「わ……」

出夢は寝ている人識に抱き着いて唇を寄せる。

「出夢、感染るから…」
「大丈夫大丈夫っ!」

出夢は人識の頭を自分の胸に押しつける。

「……いず…む……」
「…………へ?あ、嘘。寝ちゃった?………ああ、もう」



――そーいえば……

零崎の家族?って皆殺人鬼なんだよな……。
……こんな事があっても一人だったんだろうな。


「……甘えたいお年頃?」


出夢のその呟きは聞こえなかったのか、人識は出夢の胸に顔を埋めて瞳を閉じていた。

微かに寝息も聞こえてくる。

出夢は人識の頭をそっと撫でる。

「………お前はさ、何背負ってんだろうね」





……大丈夫。


僕が、そばにいるから。



おやすみなさい。









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