H I T O I Z U

□No title
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「零崎ー……」

出夢は人識の体に後ろから抱き着いた。

「なぁ、遊ぼうぜ」

人識は出夢の体を押しのけるようにして離す。

「うっさい、離れろ」
「うっわーひっど!僕が誘ってやってんのにさ。零崎の鬼ー鬼畜ー」
「……何とでも言え」
「て、云、う、か」

出夢はしつこく人識に近付き、その頬を指で突く。

「そーんなに勉強って大事なモンなのかよー。僕よりー?」

ぐりぐり、と指をねじりながら言う。

「痛ぇ痛ぇ痛ぇ!!止めろ!お前の力だと冗談じゃなく穴が開く!!」
「ちぇ」

出夢は指を離すと、人識の頬に軽くキスをした。

「零崎、遊んでよ」

はぁ、と人識は小さく溜息をつく。

「あのなぁ、俺は今勉強してんの。て云うかこの頁まで全部終わらせないと委員長に怒られるんだよ!」
「僕そんなの関係ないし?」
「俺が良くねぇ!あの委員長だぞ!?…………って、オイ……」

出夢は人識にゆっくりと自分の顔を近付けていた。

「出、夢っ……」


そのまま、唇が重なる。


と、思ったが。


「んーっ…ふぇろっひぃ……」

人識は素早く自分の手を滑り込ませると、出夢の唇に被せた。

「……駄目なモンは駄目だ」
「…俺より委員長の方が好きなんだ」
「……取り敢えずコレ終わらせるぞ」
「否、そこは否定してくれよ人識くん」
「うっさい」

人識は机に向き直って、ペンを手に取った。

「ねー零崎」

人識の後ろから出夢が声をかける。

「それ、終わったら僕の相手してくれる?」

一瞬の間の後、人識は小さく言った。


「終わったら、な」


それを聞いて僕はにいっと笑顔になる。

「零崎ー、好きー」

後ろから何度もそう言う。
けど、人識は何も答えてくれない。


「………ぎゃははっ」




ペンを滑らせる音が、少しだけ速くなった気がした。







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