O T H E R

□僕姫
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「しーしょーおー」
「何だい姫ちゃん」
「手伝って下さいよおっ!」

僕は姫ちゃんの頭にぽん、と手を置いた。

「姫ちゃん、学生の本分は勉強だよ?ほら、真面目にやる」

いっそ清々しい程の笑顔で僕は言った。

「うー」

姫ちゃんは大人しく机に向かう。

机の上には、宿題の山。

そうだよ学生は勉強しなくちゃ。
……僕が言える事でもないけど。

僕は鉛筆を握って唸っている姫ちゃんを見ながら軽く頷いた。

……………あ、倒れた。

姫ちゃんはうんうん言いながら床に伏した。

「ギブかな?」
「うぅー…師匠、ひどいです……」
「んー、じゃあ少し休もうか」

僕は自分の膝の上にぽん、と手を置いた。

「はい、おいで」

言われた通りにする姫ちゃん。

「うぐっ……師匠、姫ちゃんが一人で頑張ってるのに手伝おうと云う気の一欠片もないですか……」
「うん」
「鬼ですかあなたはー!」
「あはは」

僕は笑いながら姫ちゃんの髪を撫でた。
少しだけ浮かんだ涙を拭ってから、姫ちゃんは拗ねたように言う。

「大体師匠は姫ちゃんの事が好きなら好きって、早く言っちゃえばいいじゃないですか」
「………あの、姫ちゃん?」
「そうですよ!姫ちゃんの事好きだからって虐めてばっかり……」

がばっ、と勢いよく起き上がった姫ちゃんの頭と僕の額がぶつかる。

……両者、ダウン。
…じゃなくて。

僕は頭痛を堪えて言った。

「姫ちゃん……どこで、それを、知った、のかな?」
「師匠の態度を見てて解らない方がおかしいです……」

同じく、姫ちゃんも頭を押さえながら言う。

「………そうなんだ」
「そうなのですよ」
「うーん……」

僕は、涙目になりながら再び机に向かおうとしている健気な姫ちゃんの手を引っ張った。

「じゃあもう少しこのままでいようか」

姫ちゃんは少し考えるような仕草をしてから、小さく笑った。

「はいです」

僕の膝に頭を乗せる。

「師匠ー」
「何?」
「姫ちゃんも師匠の事好きかもしれないですよ」
「………確信ではないんだ?」
「さあ、どうですかねー」

………おいおい。

「…まぁいいや……」

僕はそっと姫ちゃんの髪に指を通す。





今日も、一日が終わる。



fin.

 

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