O T H E R

□狐さん争奪戦
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「痛い痛い痛い痛い!!狐さんひどいっ!」
「何がひどいだ。おいこら理澄」

理澄は涙目になりながら上目使いで西東を見上げる。
頭にはまだ西東の掌が置かれたままだ。

「自分が何やったか分かってるのか?」
「う…っ……分かってるんだねっ」
「『分かってるんだね』。ふん。仕事中に居眠りも何度目だ」
「だって…」

理澄はしゅん、と頭を下げる。

「もう出夢に全てやって貰うか…」

しかし、西東のその呟きを聞いて理澄は勢い良く頭を上げた。

「そ、それはいけないんだねっ!兄貴が出たらあたしの出番が無くなっちゃうよっ!」
「ふん。知るかそんなもの」

理澄はがばっ、と西東に抱き着いた。
勢いで西東は理澄の下になって倒れ込む。

「理澄」
「うっ……ぅぐ……」
「……何泣いてんだ」

理澄は西東の胸に顔を埋めたまま言った。

「だって……あたし、狐さんと一緒に居たいんだもんっ……」
「………」
「えぐっ……………ひゃっ!?」

刹那、理澄の額を西東が手のひらではたく。

「……痛いんだねっ…。やっぱ……あたし…クビ、かなぁ?」

理澄は再び涙目になった。

「『クビかな』。ふん。阿呆かお前は」
「うっ……」
「冗談だ」
「…………へ?」
「クビにはしないと言ってるんだ。誰がお前を手放すか」
「………っ……!狐さん、大好きっ!」

西東はそれには何も答えず、ただ理澄の頭にぽん、と手を置いた。
理澄は再び笑って言う。

「狐さん大好きっ!」
「そんな事は知っているさ」


それから、西東は小さく笑った。



fin.


 
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