50TITLES

□お題 20: もう時間だ 
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20: も う 時 間 だ

近頃のカカシの呑み方といったらどうしたものだろう。

折角の酒なのに、少しも酔おうとしない。

それでも酒宴に誘えば乗ってくるし勧めた盃を断ったことはなく、傍目にはいつも楽しそうに見えた。その後のカラオケでは上機嫌になり少なくても2.3曲は披露するし、たまにいくクラブでは気に入ったカワイイ女の子とそのまま二人で消えることだってあった。

毎回それなりに快適にやっている。

そう見せていても元々カカシは人を煙に巻く所があり、談笑しているからといってそれを額面通りにとるつもりはなかったし、長年の付き合いでアイツが「酔っていない」事はすぐに判別がついた。

喋らないのだ、相変わらず。

本人は無自覚かもしないが、カカシはアルコールが回ってくると少しだけ饒舌になった。心から笑い、本心で物を言った。
何も普段のアイツが寡黙というわけではなく、つまらない世間話や品のない話には簡単に乗ってくるくせになかなか素地を出さない男なのだ。
長年の友人である(と自分は思っている)俺やガイにさえも。

そんな錆だらけのゼンマイに大量のアルコールが浸み込むと回転が少しだけ軽くなって、極たまにカカシの面白い本音が聞けたというのに。

それなのに近頃のカカシの呑み方ときたら、喉を通過する前にチャクラでアルコール成分を全て分解し、ただの麦や米の汁に変化させていた。同僚同士での、友人同士での呑み方ではない。

――――まるで任務中の忍じゃないか。
それは潜入任務で酔ってはならない人間がとる、手段の一つ。
プライベートな仲間の席でそんな呑み方をしたことは一度としてなかったし(第一それでは酒を呑む意味がない)、泥酔中に急な任務が入ったとしても服めばたちまちに体内のアルコールが分解される、都合のいい一粒があることをカカシも知っていたし、「不意の任務に備えて」などという殊勝な心構えは恐ろしくアイツに似合わない上に、また必要もないことだった。

カカシが妙な呑み方をするようになったのはいつからだろう。
確か「先生」と呼ばれる役職に就いて暫くしてからだと思う。


「おい、カカシ。呑んでるのか」
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