K×S

□予 定 表
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03 :  予  定  表


「…ごめん…サスケ。ちとやりすぎた」

俺はまず先に謝った。
まだまだいける、俺も若いねと内心小躍りした事はさておいて、夕べは流石にやりすぎだったと少し反省している。
―――ほんと少しだけど。

実はさまざまな好機が重なったのが発端となって、サスケにさまざまな行為をさせてしまったのだ。
俺に背中を向けたまま微動だにしない、隣のサスケに――――。
その不穏な物体からは、超絶不機嫌オーラがバチバチッと火花を散らして、今も立ちのぼっていていた。


何をさせたんだっけ…。
もう随分と高く登っているらしい太陽光をカーテン越しに受けている天井を見上げて、俺はゆっくりと思い出してみる。
目隠し、手首の拘束、ちょっとした小道具に言葉の強要、そして最後は乗馬の稽古。

特別に驚くことでもない。
自慢じゃないが今までだってたまにやっている事。
それに俺だけが悪者でもなく、ああ見えてサスケも嫌いではないはずだし。そういうふうにしたのは俺であっても、受け入れているのはサスケ本人であって、泣き叫んで拒絶する相手に無理無体を強いているわけでは、決してないのだ。

多分サスケの後始末を俺が強引にしてしまった事に激怒しているのだと思う。

それだけは今までに一度もした事も、させてくれた事もない行為だっただけに、照明を点けたベッドの上でそれを俺にされた事が耐え難い屈辱となって、どうあっても許せないんだろう。

でも全てそれはサスケを思いやった上での、俺なりの優しさと配慮から出た行動だったのだ。
一月振りに重なった休日の今日、二人で植物園に出かける予定になっていたから。


サスケは精密に描かれた図鑑を眺めるのが好きで、驚くほど草花の名前と効能を識っていた。
顔料を用いて丁寧に描かれた花や実の色を、一つひとつ時間を掛けて眺めているサスケは、まるで絵本に夢中な子供のようだった。

そこで俺から「今度植物園に行ってみるか。優秀なガイド付で」と誘ってみたらとても喜んでくれて、二人の休日が合うのをサスケは心待ちにしていたのだ。

しかしその日の前夜、久しぶりだったセックスについ調子に乗りすぎた俺は二回目まではちゃんとゴムをつけてたのに、三回目からはもうそんな事は考えていられなくなってそのまま出すというマナー違反をしてしまった。

サスケが楽しみにしていた植物園行きを腹痛で棒に振るのは可哀想だと考え、代理で事後処理をしてやっただけの事であってヨコシマな心は微塵もなかった。
何せ当の本人は俺が張り切りすぎたせいでベッドから動けなかったから。
寧ろ感謝して貰いたいくらいだ。


でもそんな俺の親切心もサスケにとっては赦しがたい悪行でしかないらしく、さっきからどんなに謝ってもどんなに言葉をかけても、何の反応も返事もしてくれない。
さすがの俺もこれには困るし辛いし、それにムカついてもいた。


だってさっきから散々謝ってるじゃないか!
平身低頭、謝罪して諂って懺悔して後悔して――――。
本当にサスケのことを考えた上での行動だったんだって説明してるんだから、少しくらいはリアクションしてくれてもいいんじゃないのか!


100%のスケベ心でやった事ならばともかく、100%の親切心でやったことだけに、こらえきれない怒りがじわじわと湧いてくる。
全く大人げないと自覚はしていても、善意を解って貰えないとあってはかなりこたえた。

つい衝動的に、涅槃像みたいになっているサスケの布団を引き剥がすと、縮こまった両腕を掴んで無理矢理にこちらを向かせた。

「――――!」
驚きに瞠かれたサスケの両眼のふちには、小さな水の塊がある。
傷ついたような涙まじりの真っ黒い眸で見上げられ、俺の心臓はズキッと痛んだ。
ムカついていた自分をすぐに後悔して。

「ほんとにごめんったら。俺が悪かった」
心の底から悪かったと思ってるんだよ―――。
素直な気持ちを込めて、でも押さえつけた手の力はそのままにこう言った。
でもやはりサスケの唇は開かない。
俺に握られたサスケの両手が益々堅く握り込まれたのが伝わってきたかと思うと、プイッと顔をそむけられてしまった。


「もうしないよ、絶対に。約束する」
「……」
「お詫びにいっこだけ、何でも言うこと聞いてやるから」
「……」
「…な、サスケ、返事くらいしろよ」
「……」
「さっきから謝ってんでしょ?…なんか言ってよ…」
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