再びの夢2
□36話
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その後、藤村はカーブも織り混ぜて更に勢いを飛ばして極亜久高校の打線を封じ込め、対する秀峰高校も何人かは進塁するも、志甫、藤村はまるでバットを振ろうとはせずに三振、再び1番からのスタートに調整しており、大和からのスタートとなった。
大和「……」
今の大和の表情には初打席に見られた不要な感情は一切無く、「打つ」の一点に極限集中した威圧感にも似た物を感じさせる。
皇木「(……塁に出すのは癪だが、下手に刺激して球を投げられても迷惑なだけだ…打たれて多少は懲りているだろう)」
皇木はサインを送り、指示したのは四球。
流石に前打席でホームランを打たれて懲りているからか、大人しく指示通りに明らかなコントロールミスと思わせる位置に投げ込む動作が4回行われた。
ボール!!フォアボール!!
結局大人しく大和は一塁へと向かい、皇木は内心で苛立ちに似た物を感じていた。
自身の力を試したいにも関わらず、指示を聞かない、考えが浅い、練習を怠った為に実力が伴っていないと三拍子が揃い、皇木の頭ではこのピッチャーを今すぐ引きずり降ろして卜部をマウンドに立たせてしまいたかった。
しかしこんな所で乱闘沙汰を起こしてしまえば自身を潔く思わない連中の策にはまった事になるので、皇木はそれだけは避ける為に、後1点を取られたらマウンドから引きずり降ろすと取引をしたのだ。
向こうは大和以外に点を許していないが為に調子に乗って承諾したのだろうが、皇木は藤村の思惑を察しているからこそこんな指示を出したのである。
皇木は自分で考えられるだけの最善の指示を出しているが、向こうはやたら反抗したがる、だから分かっていた。
皇木「(せいぜい偉そうに指示を無視していろ汚物。貴様はこの回でマウンドから降りる事になるだろうからな)」
なので内心、そう毒を吐いていた。