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□あらしのよるに
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ドンドン

「ん?」
わいわいと騒ぐテレビの音に混じって、何かを叩くような音が聞こえる。
そんな気がして、玄関の方に意識を向けてみた。

ゴウゴウと、さぞや荒れているであろう外の景色を容易に想像させる音がするものの、目的のものは聞き取れない。
「・・・気のせいか」
独り言のように呟いて、顔をテレビに戻した。


ドンドンドンドン
「は?」
どうやら気のせいではないらしい。
雨が風に叩きつけられる音とともに、やっぱり聞こえる。
さっきよりもはっきりと、激しく。
誰か来たんだろうか。

「はい・・・?」
こんな台風の夜に、しかもチャイムを鳴らすでもなく、声を発するでもなく。
一体何者だというんだろう。
訝しんで低く声を出すと、上擦ったようなトーンの高い叫びが返ってきた。
「オレー!」

「泉!?」
慌ててドアを開けて飛び込んできた光景に、我が目を疑った。
ドアの前に佇んでいるのは、ズブ濡れの、数時間ぶりの愛しい姿。
傘すら持たずにニコニコと笑っている。
「な・・・っにしてんだよーー!」
信っっじらんねえ!

「傘さっき折れた!からゴミ捨て場んとこ捨ててきましたー」
傘はどうしたと焦るオレをよそに、泉は大層なご機嫌だ。
「ましたーじゃねえだろ。ホラ早く入れよ」

ぐ、と冷えた肩を抱いて招き入れようとするのに、動かない。
「おい・・・?」

不審に思って顔を覗き込むと、泉はニヤリと顔を歪ませた。
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