一つ前とは?

一般的に正式な襲(かさね…襦袢やきものを重ね着する事)では、襦袢の下前と上前を合わせ、腰紐で固定してから、きものを羽織り下前と上前を合わせ、帯で固定します。

それに対して一つ前と云う着方では、襦袢を羽織ったら、前を合わせる前に、きものを羽織ります。
そして、襦袢ときものの前をまとめて合わせます。
つまり、前身頃の布の重なり方は、体に近い方から、襦袢の下前〜きものの下前〜襦袢の上前〜きものの上前となります。
(正式な襲では、襦袢の下前〜襦袢の上前〜きものの下前〜きものの上前となりますね。)

一つ前の利点は、襦袢ときものそれぞれの前を合わせ固定する手間が省ける事。
小用の時に、前を開く手間が省ける事です。

江戸時代の文献によれば、昔の庶民は一つ前に着る人が多く、正式な襲をしているのは武士に多く、同じ着流し姿であっても襟元を見れば、武士か庶民か見分けがついた、なんて話もあります。


六尺褌とは?

晒し木綿等の反物を、約六尺の長さで裁断した褌です。
締め方は色々種類があるようですので、詳しくは褌専門のサイト等を御覧下さい。

これに対して越中褌は、約三尺の長さに裁断し、端に腰紐を縫い付けた褌です。

六尺褌は丁度背骨の位置でコブ状の結び目が出来ます。対して越中褌は前で蝶々結びにしますので、胴回りは平坦です。
きものの下着として、私が六尺褌をオススメしたのは、このコブ状の結び目がある為に、この上に重ねるように締めた腰紐が、シッカリ固定されるからなのです。

褌の利点は、大小の用を足す際に脱ぐ必要が無い事です。
股関を覆う布を横にずらせば、用が済みます。
対してトランクス等のパンツは、ゴムが腰紐や帯の下敷きになる事が多く、特に大用の際には非常に面倒な事になります。

きものの下着に褌をオススメするのは、和装だから和の下着と云う事では無く、実用的に利便性が高いからなのです。


襦袢とは?

きもの(長着)の下に着る下着で、長襦袢・半襦袢等の種類があります。
江戸〜明治時代には、男の襦袢と云えば半襦袢を指す場合が多かったようです。
尻端折りをする際に、長襦袢では裾が邪魔になる為でしょうか。
しかし現在は、きものと襦袢のセット商品等を見るに、襦袢と云えば長襦袢を指す場合が多いようです。
この漢の着付け実践編でも、長襦袢を前提に説明しています。

襦袢の役割は、古来より襲(重ね着)が正式とされている為、実用的には防寒の為、汗や脂汚れからきものを守る為、本質的にはこの三点です。
ですから、普段着としてきものを着る場合には、暑ければ半襦袢にする、或いは、汗汚れ等を気にしないのであれば襦袢を着ない、と云う選択もあります。

但し、正装としてきものを着る場合には、襲が正式ですから、襦袢ときものを重ね着する必要があります。
この場合には、一つ前では無く、襦袢の前を合わせた後に、きものの前を合わせる重ね方になります。

また、普段着であれば下着は襦袢である必要はありません。
江戸〜明治時代には、腹掛け股引(パッチとも云う)の上にきものを着る庶民の姿が、浮世絵や錦絵等に見られます。
明治〜大正時代には、スタンドカラーと云う、立て衿のシャツが流行りました。

しかし、昨今では何故か普段着としての着付け指南等でも、襦袢を着て前を各々打ち合わせる正式な着方だけが語られていて、きものは難しい・堅苦しいと云った悪印象を与えているように感じます。

必要に応じて、また実用に合わせて、自由に使い分けて下さい。


兵児帯とは?

兵児帯と書いて「へこおび」と読みます。

実践編其の壱でも説明しました通り、元来は江戸時代の薩摩藩士が巻いていた帯です。
と云っても、この元来の兵児帯は、ただの晒し木綿の反物を、適当な長さに切って使っていただけのようです。
同じように、晒し木綿を適当な長さに切って使う物に、前に触れました褌がありますね。
体に巻いていなければ、兵児帯も褌も同じ物に見えるので、薩摩のある地方の方言では、褌を兵児と呼ぶ事もあったそうです。

さて、現在一般的に云う兵児帯は、正絹や化繊の物が大半で、帯の両端に絞りが施された物が多く、中には総絞りの豪華な物もあります。
これらを選ぶ際の留意点ですが、生地が艶やかで滑らか過ぎる物は、生地が滑り易く締まりが悪い場合もあります。

私のオススメの兵児帯は、元来の兵児帯…
そうです。ただの晒し木綿です。
正絹や化繊の兵児帯に比べて、晒し木綿は俄然良く締まります。実用的には一番ですね。

晒し木綿を兵児帯にする際の留意点は、六尺に切ると本当に褌と見分けがつかなくなるので、気をつけて下さい。
二間の長さに切れば、巻き代も充分ですし、褌と間違える事も無いでしょう。

晒し木綿は、通気性や吸水性に優れていますので、夏の暑い時期にはとても楽ですよ。
また、晒し木綿以外では、薄手の木綿生地でも、同様に使い勝手の良い兵児帯が出来上がるでしょう。

兵児帯の最大の利点は、結び方が簡単な所で、蝶々結びでも良いですし、体に晒しを巻くのと同じ要領の巻き挟みでも良いです。
兎に角、サッと速やかに誰でも気軽に結んで使える帯です。

きもの初挑戦の方には強くオススメします。

また、角帯は芯があり固い為に、体の動きに追従出来ず、座ると帯が上がってしまい、着崩れの元になり易いのですが、兵児帯は柔らかいので体の動きに追従します。角帯より着崩れしにくい帯と云えます。

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