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□お人形の夢と眠り
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ああ、夢のようだ――――まるで、シェイクスピアの世界にでも入り込んでしまったような――――まさに、そんな気分だった。

朝日を全身に受け、白いワンピースを纏った彼女は屋敷の窓辺に座っていた。
それだけなのにもかかわらず、神々しさまで感じられた。

僕は、息をのんで立ち止まった。
彼女は微動だにせず、朝日を見つめている。
まるで、精巧な人形のようだ。
しばらくすると「窓辺の彼女」は部屋の奥へと吸い込まれていった。
僕はやっと解放され、息をついた。
本当に美しかった…いや、こんな単純なコトバで表して良いのだろうか。

もう、時間だ。
会議に遅刻してしまう。
僕は後ろ髪引かれる思いでその場を後にした。





「…くん。大橋君。聞いているのかね、君は。」

僕は記憶の彼方から急に現実に引き戻され、少しばかり焦った。
そうだ。
今は会議の途中だった。
しかし、困ったな。彼女の姿が頭から離れない。そして、何故だろう。
彼女のことを考えると気分がいい――――。
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