short

□月光の手紙
1ページ/11ページ


ビロードのような夜空に満天の星が輝いている。
あそこで一際光っているのは…ポラリス(北極星)か。
あっちには獅子座。
そっちにはオリオン座まである。
もう、秋も終わってしまうんだな。
そんなことを考えながら俺はまた天然のプラネタリウムを見つめた。
まったく、都会の星と違い、山中の星は静かに輝くものだ。
都会の星はやけに刺々しく冷たい。
自己主張をしないと、人工の星に消されてしまうからなのだろうか。

ぱっと二つの丸い光が俺を照らし出した。
暗闇の慣れた目を細めると、車の中から人が降りてきた。


「どうかしましたか?こんな夜更けの、それも何も無い山奥に。」


声音からして三十後半であろう男は逆光でシルエットしか見ることが出来ない。
俺は彼の問いに苦笑し、よしかかっていた中古の四駆を指差した。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ