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□月光の手紙
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「車がエンストしてしまって…田舎だから車も殆ど通らないので、他の車を待つついでに星でも見ようかなと思いまして。此処ら辺は本当にはっきりと見えますね。夜空なんて久しぶりに見ました。」


相手の影は空を見上げた。


「ああ、今夜は随分空が澄んでいますね。こんな夜は滅多にありませんよ。」


そう言う相手の声は愉しげだ。
彼は先程の俺と同じように空を見つめた。
俺は血の気の失せた指先をさすり、彼を見つめた。

なんとも不思議な構図だ。


長い時間が過ぎた気がした。
俺が指先を温めるのを諦めかけたとき、俺の無言の訴えが通じたのだろうか。
影がライトのついたままの車のドアを開けた。


「どうぞ。幸い僕の家はすぐそこですので、良ければ。」


「有難うございます!」


俺達は車に乗り込んだ。
漆黒の単調な景色が矢のごとく過ぎてゆく。
この男の家はこの山の山頂なのか。
目的地にはなるべく一人で行きたかった。
もやもやとした気持ちが胸をかき乱す。

車内の暖かい空気、深夜のラジオ番組のBGMが俺を眠りへと誘った。
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