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□遠鳴り
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熱い空気を吸い込んで私は目を覚ました。
伸ばしかけた手が行き場無く宙を彷徨っている。
私は手を軽く握ってぱたっと耳の横に落とした。
悪夢のせいで強張っていた身体からゆっくりと力を抜いた。
額から、汗が一滴落ちた。
いつの間に寝たんだろう。
……とはいっても、ずっと寝ていたも同然か。
最近は部屋から一歩も出ていない。

私は自嘲気味に笑った。

右足は相変わらずぎこちなくしか動いてはくれない。
お母さんも、お父さんも、懸命にリハビリを手伝ってくれた。

だけど、だけどね、私の夏は、終わっちゃったんだよ?
私の夢や、努力、生きる意味、全部無くなっちゃった。
一瞬で、泡がはじけるように。
私はやり切れなくなって、物にあたったり、泣きじゃくったり子供みたいだった。
ずっとそれを繰り返していたら疲れてしまって、急に無気力になった。


解ってしまったから。

もう、あの場所、あの時はどうしても戻ってこないってこと。
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