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□いっそ狂った世界を望む
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『きみの為にたとえ世界を失うことがあろうとしても
世界の為にきみを失いたくはない』
(なんて言葉を言ったのは、誰だったのだろう)
隣で眠る彼の吐息を感じながら、
不意に思う。
俺の世界は、
俺と言う存在が生まれてから死ぬまで。
だとすると、
世界の理からはみでた存在の彼は、
何度も何度も
『世界の為に誰かを失った』
と言う事になるのだから。
「ねえ。君の為に世界を失うには如何すればいいのかな?」
彼を起こさないように、そっと抱きしめ鼓動を確かめ美しい蒼い髪を梳きながら問い掛ける。
答はいらない。
だって彼は、
「なにを馬鹿なことを」って、
泣きそうな顔で言うに決まっているから。
「世界の終わりなんていらない。君の為に世界を失いたいよ」
例え世界の理から外れたとしても。
そうすれば、
『世界の為に君を失うことも、君が世界の為に俺を失うことも』
無くなる。
君と2人で世界に取り残されよう。
ああ、それはなんて…
「幸せなことなんだろう」