ラブ★コン二次創作

□花 火
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 毎年、夏・恒例の花火大会。
 今年も大谷と花火を見に行く。

「なー。ほんまにほしいもん、なかったんか?」
 今日で何回目やろ。
 大谷はさっきから同じ質問ばっかり
 だから、あたしも同じ答えばっかり。
「ないって。あたし、誕生日祝ってくれるだけで十分やねん」
「せやかて・・・」


 毎年、花火大会の日は、あたしの誕生日。
「ほしいものはなんもない」なんて言うあたしに、それでも大谷はプレゼントを買ってくれた。
 それはめっちゃ可愛いアクセサリーで。
 嬉しくって、涙でそうになったけど。

 でも、本当はその気持ちだけで十分。
 ほんまやで。
 そりゃあ、あたしだって女の子やし。
 プレゼント貰ったら嬉しいのは確かだけど。
 誕生日をおぼえていてくれて、祝ってくれる。
 大谷のその気持ちだけで十分嬉しいねん。
 どんなプレゼントだって嬉しいねん。

 ・・・と、毎年言ってるのに、いつも大谷はあたしに聞いてくる。
「なんかほしいもんないんか?」
 あたしは「なんもいらんよ」と返して、でも結局は、大谷がなにかしらプレゼントを買ってきてくれて。



「せやかて・・・」
 夜空に咲いた花火は、「チェッ」と舌打ちする大谷の顔をも照らす。
 それを見ながら、隣であたしはクスッと笑って。
 そんなあたしを、大谷はふてくされて見る。
 毎年こんなことしてるような気がする。
 同じようなことばっかり。
 でも、こんな他愛のない瞬間が、すごくすき。
 大谷と過ごす時間が。
 ・・・だいすき。


 花火大会の帰り道。
 人ごみの中を、手を繋ぎながらふたりで歩く。
 今年も花火きれいやった。
 でも、それはきっと隣に大谷がいたからやねんなぁ・・・

「なぁ、大谷?」
「なんや」
「・・・ひとつだけあったわ」
 あたしは大谷に顔を向けると、にっこり笑う。
「ん? なんやねん、ひとつだけって」
「さっきから言ってたやん。ほしいもん」
「え?」
 夜空を見上げ、「プレゼントとはちょっと違うかもしれんけど・・・」と前置きして。
 あたしはそのまま笑いながら続ける。
「・・・あたし、毎年こうやって大谷と一緒に花火を見たい」


「・・・アホか」
 少しの沈黙の後。大谷はポツリと呟く。
「あ、アホてなによ」
 意外な反応に、あたしはちょっとむっとする。
 なによ。アホて。
 せっかく”彼女”が可愛いこと言ってんやで?
 アホはないやろ。
 なんかめっちゃやな感じやんか!


「だってそんなん、おもろないやないか」
「おもろないって・・・なんやのそれ!」
 少しどころか、かなりむっときて。
 あたしは強い口調で大谷に食って掛かる。
 大谷はふぅっと溜息をついて。

「そんなん、当たり前すぎてつまらん」
「当たり前?」
「来年も見に来るに決まってるやろ? 次の年も、ずっと・・・」
「・・・」
「だからおもろないねん。もっとプレゼントしがいのあるもんがええやん」
 そう言うと、大谷はあたしを見てにっこり笑う。
 子供みたいな、顔いっぱいに広がった笑顔。
 あたしの大好きな大谷の笑顔。



『来年も見に来るに決まってるやろ? 次の年も、ずっと・・・』


 なぁ。
 あたし現金かもしれんけど。
 ほんの数秒前までむかつくとか言うてんけど。
 いまはちょっと、いやなんかものすごい嬉しいんやねんけど。
 どんなプレゼントよりも、そう思ってくれてることが、何よりも嬉しいんやけど。


 来年も、再来年も。
 あたし達、こうして花火大会を見にこれるのかな。
 大谷の隣で、夜空に咲く花火を見れるのかな。
 いくつになっても、きっと隣にいるのは大谷。
 それだけで、あたしは十分幸せやねん。

 end
 (2007-8-3)
 

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