ラブ★コン二次創作

□Are you ready? -after-
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「今度こそ、帰るな」
 二人で作った料理を食べ終わると、小泉は帰り支度を始めた。
「なら、送ってくわ」
 そういって、オレは立ち上がろうとして。
 ソファに座ったままの小泉をチラッと見た。



「なんもせーへんから」



 この言葉が、さっきからオレの頭の中をぐるぐるまわっていた。
 やっぱり、いま小泉が安心しきってるのって、オレがこんなこと言ったからやろうな・・・
 別に安心してもらってかまわへんけど・・・
 その言葉にウソはない・・・はずやけど。



 ・・・うーん・・・



「あのさ」
 立ち上がろうとした小泉を、思わずオレは呼びとめた。
「なに?」
 小泉はきょとんとしてオレをみる。


 そりゃ、たしかに言うた。
 なんもせーへん、言うた。
 せやけど。
 こんなに近くにおるのに。
 一日中ずっと一緒におったのに。
 このままなんもせずに家まで送って。


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そんなん、ちょっとオレ辛いよなあ・・・。



「・・・大谷?」
 黙り込んでしまったオレを、小泉は不思議そうに見つめていた。
 そんな表情すら、オレの気持ちをかき乱すとも気づかずに。
 しばらくの間、小泉はそんなオレを見ていたが、やがて、
「・・・聞きたいこと・・・あんねんけど」
 と、言いにくそうに聞いてきた。
「なんや?」
「・・・さっきの・・・ほんまに全部冗談やった?」
 オレは予想外の言葉に少し驚き、小泉はそのまま俯いてしまった。


 "さっきの"


 それは"冗談"と、小泉には思わせていたいことで。
 オレもそう思いこんでいたいことで。
 ・・・ていうか。
 冗談で無理やり終わりにしたのに、こいつなに言い出すんや・・・


「・・・お前はどう思てん?」
 オレは頭を掻きながら聞いてみた。
「あ、あたしはええねん。あたしじゃなくて大谷はどうやったか知りたいねん」
「そうやなあ・・・」


 本当の気持ちを言うてしまおうか。
 そう思った瞬間、さっきの泣きだしそうな小泉の顔が脳裏に浮かんで。


「・・・"わからん"・・・かなあ」
「わからんって、なんでよ」
「わからんもんは、わからんねん」
「なによそれ・・・」
 小泉は膨れっ面をしながら苦笑いし、それを見てオレもつられて笑ってしまった。
 オレたちは、二人してしばらく笑いあっていた。


「大谷、いつも肝心なこと教えてくれへん」
「なんやそれ」
 フゥッと溜息をつく小泉の頭を、オレはポンと軽く叩いた。
 それでも、相変わらず小泉の頬は膨れたままだったから。
 人差し指で軽くつついたら、小泉はびっくりしてオレを見た。


「な、なにすんの・・・」
 驚いている小泉の言葉を遮るように、オレは言った。
「なあ。・・・やっぱりさっきの、ちょっと取り消す」
「・・・さっきのって・・・?」
「"なんもせーへん"てやつ」
 そこまで言うと、オレは小泉の表情が変わったのに気がついた。
「・・・ちょ、ちょっとって、どのくらい・・・」
 オレを見上げながら聞いてきた小泉の口調は、明らかに動揺していた。
 それまでとは違って、表情もこわばっているような、緊張しているような。
「そうやなあ・・・」
 オレはそう言いながら、両手で小泉の顔を軽く押さえ。


 ・・・おでこに軽くキスした。


「・・・これぐらい?」
「なっ・・・」
 小泉は顔を押さえられているせいで動けず、顔を真っ赤にして、オレをじっと見ていた。
 オレはつい調子にのって。
「あともうちょっと、取り消してもええ?」
 そう言うと、小泉は照れくさそうに笑いながら、
「あかん」
 そう言って目を閉じるから、今度はおでこでなく、くちびるにキスをした。


END



 (2007-9-8) 

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