ラブ★コン二次創作

□早く起きた朝には
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「お・・・おはよう」
「・・・おう。起きたか」
 人の気配を感じて、あたしは目を覚ました。
 しっかりと開いていない目に大谷の姿が映ったから、まだ半分眠っている頭の中で、あたしは今の状況を一生懸命考える。
 たしか、マイティ先生の結婚式に参加するんで、みんなで卒業旅行も兼ねてここに来たんやった。
 ホテルの部屋は3つで。
 カップルごとに割り当てられて。
 あたしは大谷とひとつの部屋で。
 初日は大谷を追い出したけど、昨日の夜はあたしが部屋に帰ったら、大谷はもう寝てて。
 うん。そうや。
 それで、あたしもそのまま寝たんやったっけ・・・


「・・・大谷、朝早いなあ」
「お前が寝すぎなんじゃ」
 上半身を起こして部屋の中を見回すと、まだ外は薄暗い。
 大谷はベッドの上で腕を伸ばし、大きなあくびをしていた。まだ起きたばかりみたいや。
 ぼーっとする寝起きの頭で、あたしはふと、あることに気がついた。
「・・・・・・あたしの寝顔、見たん?」
「見た。アホみたいな顔して寝とったで?あはははは」

 むかっ。どうせ、あたしはアホみたいな顔してますよっ!

 そう思いながら、ぷぅっとあたしは頬を膨らませ、楽しそうに笑う大谷を軽く睨みつける。
「なに?怒ったんか?」
 そう言いながら、大谷はあたしの顔を覗きこむから。
 あたしは右の頬を軽く押さえながら、大谷をじっと見た。
「・・・もしかして、なんかした?」
 大谷はその言葉にビクッと反応し、あたしから顔を逸らして、頭をポリポリと掻きはじめた。
「・・・やっぱし、気ーついた?」
「だって、それで目が覚めたん」
ハア・・・と溜息をつく大谷の顔は真っ赤だった。
「で、でも、ほっぺにちょっとだけ・・・やで?他はなんもしとらん!」
「ほんまに?」
「当たり前や」

 なにが当たり前なんかわからんけど。
 腕組しながら、えらそうな態度で言い切る大谷に、あたしは思わずクスッと笑ってしまった。
 ・・・ほっぺねぇ・・・
 そういうあたしも、昨日の夜、寝てる大谷の頬にキスしたんやった。
 あたしら、同じこと考えてるんかもな。
 やっぱし似たもの同士やから?


「あたしの寝顔が可愛かったからやろ!」
 冗談めかして言うと、大谷は顔を真っ赤にして必死に否定する。
「そんな訳ないやろ!気の迷いや。気の迷い!」
「必死になって否定するんがあやしいやん」
「そういうおまえだってオレに・・・・・・・・・・・・・あっ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
 あからさまに、大谷は言葉を止めたから、 あたしの心になにかが引っかかった。


 たしかに。
 寝ていても、頬にキスされたら、目が覚めることもある。
 あたしはいま、それで目が覚めたやん。
 ということは。
 もしかして。
 もしかしなくても。
 認めたくないんやけど。
 大谷も昨日、それで目が覚めたりしたん?
 ・・・・・・あたしがキスしたの、気がついたん?
 

「い、言うとくけどっ!、オレずっと寝てたんやからな?お、起きてなんかなかったんからな!?」
 明らかに動揺している大谷を見て、あたしは顔が熱くなるのを感じた。


 それって、それってば!!!
 気ーついてた言うてるのと同じやんか・・・!!


「寝たふりなんかせんといてよーー!」
 恥ずかしさのあまり、あたしはそばにあった枕を大谷に投げつけた。
 大谷はあたしの態度に、より一層動揺し、
「だ、だから!寝てた言うてるやろ!!」
「うそっ!起きてた言うてるようなもんや!!」
「ちゃ、ちゃうって!お前からキスしたなんて知ら・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・やっぱり気ーついてたんやんかーー!」
 あたしは手の届く範囲にあるものを、手当たり次第大谷に投げつけた。



「悪かったよ。ごめん。起きてた。気ーついてた」
 投げつけるものがなくなり、お互いに少し冷静になると、大谷は素直にあたしに謝った。
「・・・今すぐ忘れてくれんなら、許したってもいいけど」
「わかった、わかった、忘れるから・・・」
 あたしの機嫌を伺うように、大谷はぎこちなく笑顔を見せた。
「なら、許す」
 そう言うと、二人して同じことをしていたのがちょっと面白くて、あたしは笑った。


*  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *


「あ、もう起きなあかん時間?」
 外が明るくなってきたのを感じて、あたしは大谷に聞いた。
「まだ6時前やで」
「・・・大谷ってば、なんでこんな早くに起きてたん?」
「早く寝たから目が覚めたんじゃ」


 ・・・うそつくのヘタやな、大谷は。
 早く寝たなんて、うそやん。
 あたしが部屋に戻ったときも、起きてた言うたやん。
 今だって、あたしより早く起きてたやん。
 初日だって、あたしが部屋を追い出したせいでほとんど寝てないのに。

 
 もしかして、今だってほとんど寝てなかったりする?
 ・・・それは、もしかすると。
 隣にあたしがいたから・・・かなあ。
 大谷も、あたしと同じベットで寝るの、緊張したん?


 やっぱり、あたしら似たもん同士なんかな・・・


「大谷の目の下に、クマできてるで?」
「えっ!?マジで?」
 慌てて洗面所に駆け込む大谷を、あたしは笑いながら見ていた。
「できてへんやんけ!」
 怒鳴りこむようにして戻ってくると、ドカッとベッドに腰掛ける。
「大谷、寝不足やろ?」
「ちゃんと寝とるわ」
「そう?」
 くすくす笑うあたしに、大谷はむすっとした表情をして。
「大体、お前が寝すぎやねん」
「寝すぎちゃうよ。あたしも緊張してん。なかなか寝つけなかったもん」
 そう言うと、大谷はあたしをじっと見て。
 すごく真剣な表情であたしを見て。
「・・・オレも、そうやった」
 小さな声でそう呟くと、大谷の顔が近づいてきて。
 大谷の瞳がどんどん近くなってきて。
 あたしはそっと瞳を閉じた。



 キスの後、大谷は照れくさそうにしながら言った。
「もうちょっと明るくなったら、散歩いこか?」
「ええな、それ!」
 あたしはベットから立ち上がり、窓のカーテンを思い切り開けた。
「ほんまお前、朝から元気やな」
 そう言うと、大谷はニッと笑った。


END



 (2007-9-9)
 

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