ラブ★コン二次創作
□早く起きた朝には
1ページ/1ページ
「お・・・おはよう」
「・・・おう。起きたか」
人の気配を感じて、あたしは目を覚ました。
しっかりと開いていない目に大谷の姿が映ったから、まだ半分眠っている頭の中で、あたしは今の状況を一生懸命考える。
たしか、マイティ先生の結婚式に参加するんで、みんなで卒業旅行も兼ねてここに来たんやった。
ホテルの部屋は3つで。
カップルごとに割り当てられて。
あたしは大谷とひとつの部屋で。
初日は大谷を追い出したけど、昨日の夜はあたしが部屋に帰ったら、大谷はもう寝てて。
うん。そうや。
それで、あたしもそのまま寝たんやったっけ・・・
「・・・大谷、朝早いなあ」
「お前が寝すぎなんじゃ」
上半身を起こして部屋の中を見回すと、まだ外は薄暗い。
大谷はベッドの上で腕を伸ばし、大きなあくびをしていた。まだ起きたばかりみたいや。
ぼーっとする寝起きの頭で、あたしはふと、あることに気がついた。
「・・・・・・あたしの寝顔、見たん?」
「見た。アホみたいな顔して寝とったで?あはははは」
むかっ。どうせ、あたしはアホみたいな顔してますよっ!
そう思いながら、ぷぅっとあたしは頬を膨らませ、楽しそうに笑う大谷を軽く睨みつける。
「なに?怒ったんか?」
そう言いながら、大谷はあたしの顔を覗きこむから。
あたしは右の頬を軽く押さえながら、大谷をじっと見た。
「・・・もしかして、なんかした?」
大谷はその言葉にビクッと反応し、あたしから顔を逸らして、頭をポリポリと掻きはじめた。
「・・・やっぱし、気ーついた?」
「だって、それで目が覚めたん」
ハア・・・と溜息をつく大谷の顔は真っ赤だった。
「で、でも、ほっぺにちょっとだけ・・・やで?他はなんもしとらん!」
「ほんまに?」
「当たり前や」
なにが当たり前なんかわからんけど。
腕組しながら、えらそうな態度で言い切る大谷に、あたしは思わずクスッと笑ってしまった。
・・・ほっぺねぇ・・・
そういうあたしも、昨日の夜、寝てる大谷の頬にキスしたんやった。
あたしら、同じこと考えてるんかもな。
やっぱし似たもの同士やから?
「あたしの寝顔が可愛かったからやろ!」
冗談めかして言うと、大谷は顔を真っ赤にして必死に否定する。
「そんな訳ないやろ!気の迷いや。気の迷い!」
「必死になって否定するんがあやしいやん」
「そういうおまえだってオレに・・・・・・・・・・・・・あっ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
あからさまに、大谷は言葉を止めたから、 あたしの心になにかが引っかかった。
たしかに。
寝ていても、頬にキスされたら、目が覚めることもある。
あたしはいま、それで目が覚めたやん。
ということは。
もしかして。
もしかしなくても。
認めたくないんやけど。
大谷も昨日、それで目が覚めたりしたん?
・・・・・・あたしがキスしたの、気がついたん?
「い、言うとくけどっ!、オレずっと寝てたんやからな?お、起きてなんかなかったんからな!?」
明らかに動揺している大谷を見て、あたしは顔が熱くなるのを感じた。
それって、それってば!!!
気ーついてた言うてるのと同じやんか・・・!!
「寝たふりなんかせんといてよーー!」
恥ずかしさのあまり、あたしはそばにあった枕を大谷に投げつけた。
大谷はあたしの態度に、より一層動揺し、
「だ、だから!寝てた言うてるやろ!!」
「うそっ!起きてた言うてるようなもんや!!」
「ちゃ、ちゃうって!お前からキスしたなんて知ら・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・やっぱり気ーついてたんやんかーー!」
あたしは手の届く範囲にあるものを、手当たり次第大谷に投げつけた。
「悪かったよ。ごめん。起きてた。気ーついてた」
投げつけるものがなくなり、お互いに少し冷静になると、大谷は素直にあたしに謝った。
「・・・今すぐ忘れてくれんなら、許したってもいいけど」
「わかった、わかった、忘れるから・・・」
あたしの機嫌を伺うように、大谷はぎこちなく笑顔を見せた。
「なら、許す」
そう言うと、二人して同じことをしていたのがちょっと面白くて、あたしは笑った。
* * * * * * * * * * * * * * * *
「あ、もう起きなあかん時間?」
外が明るくなってきたのを感じて、あたしは大谷に聞いた。
「まだ6時前やで」
「・・・大谷ってば、なんでこんな早くに起きてたん?」
「早く寝たから目が覚めたんじゃ」
・・・うそつくのヘタやな、大谷は。
早く寝たなんて、うそやん。
あたしが部屋に戻ったときも、起きてた言うたやん。
今だって、あたしより早く起きてたやん。
初日だって、あたしが部屋を追い出したせいでほとんど寝てないのに。
もしかして、今だってほとんど寝てなかったりする?
・・・それは、もしかすると。
隣にあたしがいたから・・・かなあ。
大谷も、あたしと同じベットで寝るの、緊張したん?
やっぱり、あたしら似たもん同士なんかな・・・
「大谷の目の下に、クマできてるで?」
「えっ!?マジで?」
慌てて洗面所に駆け込む大谷を、あたしは笑いながら見ていた。
「できてへんやんけ!」
怒鳴りこむようにして戻ってくると、ドカッとベッドに腰掛ける。
「大谷、寝不足やろ?」
「ちゃんと寝とるわ」
「そう?」
くすくす笑うあたしに、大谷はむすっとした表情をして。
「大体、お前が寝すぎやねん」
「寝すぎちゃうよ。あたしも緊張してん。なかなか寝つけなかったもん」
そう言うと、大谷はあたしをじっと見て。
すごく真剣な表情であたしを見て。
「・・・オレも、そうやった」
小さな声でそう呟くと、大谷の顔が近づいてきて。
大谷の瞳がどんどん近くなってきて。
あたしはそっと瞳を閉じた。
キスの後、大谷は照れくさそうにしながら言った。
「もうちょっと明るくなったら、散歩いこか?」
「ええな、それ!」
あたしはベットから立ち上がり、窓のカーテンを思い切り開けた。
「ほんまお前、朝から元気やな」
そう言うと、大谷はニッと笑った。
END
(2007-9-9)