ラブ★コン二次創作・2
□shirt
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「・・・おまえ、なにしてん?」
「へ!?」
リサはその声に驚き振り返る・・・・と。
そこには、大谷がドアにもたれながら立っていた。
* * * * * * * *
それはお正月も過ぎ、寒さの厳しくなってきた頃。
リサは大谷の家に遊びに来ていた。
大谷の家族は全員お出かけ中。
ならばと、2人でまったりのんびりDVDを鑑賞していた・・・のだけれども。
「・・・・・・・なぁ、大谷」
「ん?」
DVDを見終わり、部屋の電気を点けようと立ち上がった大谷に、リサは耳を澄ましながら言った。
「なんや、雨降ってる気せーへん?」
「え?」
大谷は慌てて窓に駆けよる。
そして窓の外を覗くと、思わず叫んだ。
「うわ・・・雨降ってるやん」
「やっぱり?なんか音すんなぁ思て」
「DVDの音大きかったんかなぁ。あんまし気がつかんかったわ・・・・・・・・あっ!」
そこまで言うと、大谷は『しまった』という顔をして、慌ててベランダへ向かい。
リサはきょとんとした顔をしながら、ひとり大谷の部屋に取り残された。
数分後。
両手に洗濯物を抱えながら、大谷が部屋に戻ってくる。
「悪い。オカンに頼まれてたの忘れてたわ」
「・・・洗濯物?」
「雨降りそうやったら、取り込んどきや〜言われてん」
「・・・雨降ってますよ、大谷さん?」
リサのツッコミに、大谷はボケるのも忘れて苦笑する。
「てか、あと布団もあんねん。もっかいベランダ行ってくるわ」
そう言い残すと、大谷は再度部屋を出て行った。
部屋の中に、リサと取り込んだばかりの洗濯物を残して。
「なんやねん、大谷・・・」
そう言いながら、リサは洗濯物の山に目をやると、思わずクスッと笑った。
大谷・・・意外と家のこととか手伝ってんなぁ。
男のクセに、細かいとこあるし、結婚したら家事とかしそうなタイプやん?
料理に洗濯に掃除、案外マメに手伝ってくれたりして・・・
そこまで考えて、リサはハッとした。
(な、何を考えてんあたし!)
そして何度か顔を横に振ると、パンパンと両頬を軽く叩く。
(それより少しは、女らしいところを見せとかな!)
そう思いながら洗濯物をたたみ始めたリサは、不意に、その中に大谷のシャツを見つけた。
それは少し寒くなり始めた初秋に、2人して買い物に出かけた時に買ったシャツで。
リサが大谷に選んであげたものだった。
そのシャツを手にし、リサはニッコリと笑う。
あたしが選んだシャツやん。
大谷、意外と気にいってくれてん。
デートの時にもよく着てるし。
学校にもよく着て行ってるて、この間言うてたし。
そんなことを思いながら、リサはシャツをたたもうとし。
・・・ふと、手を止めた。
そして、手にしたシャツに、そっと顔を近づけてみる。
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・えへへ。
このシャツ・・・大谷にめっちゃ似合ってん。
大谷を思いだしながら、リサは思わずそのシャツに顔を埋めた。
(なんか、大谷が傍におるみたいや〜)
そして、えへへと笑いながら、シャツを抱きしめる。
・・・が。
ちょうどその時、大谷が声をかけてきたのだった。
* * * * * * * *
ドアにもたれたまま、大谷はリサに言った。
「・・・シャツ、そんなんしてたらシワになるんやけど」
「あっ・・・あ、そうやな。うん。たたまないとアカンよな」
リサは慌ててシャツを広げ、たたもうとするも動きがぎこちない。
大谷は不思議そうな顔をして、そんなリサを見た。
「てか、なんでシャツ、抱きしめてんの?」
「え!?そ、そんなんしてへん・・・」
「してたやん」
「・・・・うっ・・・」
リサは反論することもできず、無言のまま俯く。
すると大谷はしゃがみこんで、リサの顔を覗きこんだ。
ど、どないしよ・・・
言い訳するも、なんて言うたらええねん。
てか、見られてた・・・よな。
あんなん見られて、言い訳なんて思いつかへんよ・・・。
「まぁ、別にどうでもええけど」
答えようとしないリサを見ながら、大谷はシャツを手にとりたたみ始める。
そんな大谷を横目で見ながら、リサはポツリと呟いた。
「・・・・だって」
「・・・え?」
リサはひと呼吸おいて続けた。
「だって、大谷のシャツやったから・・・」
そう言いながら、リサは頬を赤くする。
「大谷がいつも着てたの覚えてたから。だから、つい・・・」
「・・・シャツ抱きしめたん?」
「も、もうええやん!そんなんどうでも・・・」
リサは大谷の視線から逃れようと、目を逸らす。
すると、そんなリサを見ながら、大谷はクスッと笑い、ぐっと顔を近づけた。
「せっかく洗濯してん、こんなんされたらアカンよな」
「ご、ごめん・・・」
シャツを片手に持ち、真面目な口調で言う大谷に、思わずリサは謝った。
すると、大谷はニカッと笑い。
「まぁ、シャツはアカンけど」
「え?」
「・・・こっちの方が、シャツ抱きしめるよりええんちゃう?」
そう言うと、大谷はリサを抱きしめた。
「え?!あ、ちょ、ちょっと・・・」
「もしかして、こっちなら抱きしめ放題?」
「な、なに言うて・・」
「あーでも、逆やないとアカンか?おまえがオレを抱きしめるほうがええの?」
大谷はニヤニヤと笑いながら、腕の中のリサを見る。
そんな大谷と顔を合わせられないリサは、顔を真っ赤にする。
「どっちがいい?」
「・・・ど、どっちって・・・」
「ぎゅってされるのとするのと、どっちがええんかなて」
リサの顔を覗きこみ、吐息を感じるほどに近づきながら、大谷が言うと。
リサは頬を赤く染めたまま、恥ずかしさのせいか、大谷の視線から目を逸らした。
大谷はそんなリサを気にもせず、楽しげな表情で、幾度となくリサの髪を撫でると。
「オレはどっちでもええんやけど?」
そう言って、クスッと笑う。
その笑顔を見ながら、リサは思わず大谷の着ているシャツをぎゅっと掴んだ。
そして、ポツリと呟く。。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ぎゅってされる方がいい」
「そっか。ほな、そうしたる」
そう言うと、大谷はリサの額に唇を寄せながら、より強く抱きしめたのだった。
END
(2007-1-9)