ラブ★コン二次創作・2

□スーツと袴と振袖と
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「なぁ、大谷はなんで袴にしなかったん?」
「え?」
 成人式の帰り道。
 振袖姿のリサと、スーツの大谷は、夜道を並んで歩いていた。


「意外と袴の男の子多かったやん。だからなんでかなー思て」
「・・・そら、オレかてスーツと袴、どっちにしようか迷ってんけど」
「けど?」
 リサは立ち止まって首をかしげる。
 大谷は一瞬、横目でリサを見た。
 そして、そのまま歩き続けて言った。
「・・・・・・・・・・ま、そんなんどーでもええやん」
「へ?」
 それまで隣を歩いていた大谷が、先に歩いて行ってしまったことに、リサは思わず顔をしかめた。


「・・・えっと。なんかめっちゃ気になる言い方なんやけど?」
「別にたいした理由やないて」
「だったら教えてよ。気になるやん・・・」
「だからもういいって・・」
 あからさまに、この話題から逃れたいオーラを発する大谷に、リサは逆に興味を隠しきれない。
「あ!もしかしてスーツの方がかっこいいなーとかそんな理由?」
「ちゃう」
「それとも、袴やとサイズがあんましなかったとか?」
「そんなんちゃうわ!おまえがっ!」
「・・・あたしが?」
「いや、なんでもない」
 そう言って黙り込む大谷を、リサはじっと見た。

 あたし・・・変なこと言うた?
 なんか、機嫌悪そうな・・・気が。

「なぁ。大谷怒ってん?」
「怒っとらんわ。それよりのど渇いた。そこのコンビニで飲みモン買うてくる」
「え、ちょっと、おーたに・・・」
 逃げ出すようにコンビニに入っていった大谷を見ながら、リサは軽く溜息をつく。

 なんか、すっきりしないというか。
 たいした理由やないんやったら、教えてくれてもええのに。



「おまえなぁ。振袖やのに、なんでそんな顔してんねん」
 しばらくすると、ペットボトルを手に、大谷がコンビニから出てきた。
 そして、不機嫌になるとでてくるリサのフナ顔に気づき、呆れた顔をする。
「だって、大谷教えてくれへんもん」
「まだ言うてんのか?ほら、お茶」
 そう言って、大谷はペットボトルのお茶をリサに差し出す。
「あ、ありがと・・・え?これ・・・」
 それは、すでに蓋を開けて、ストローが入れてあるペットボトルで。
 受け取りながら、リサはまじまじとそのペットボトルを眺める。

「・・・なんか、今日は大谷がめっちゃ親切や」
「そんなんいつものことやろ」
「だって、ストローまで入れてくれんのなんて、今までなかったやん」
「気が向いたからや。たまたま!」


 そういえば。
 今日は家まで迎えに来てくれて。
 慣れない着物で動きがちょっとおかしーなってるあたしを、さりげなくフォローしてくれたん。
 人込みの中を歩く時は、ぶつからないように気をつかってくれて。
 お昼を食べる時も、振袖汚さんようにて、食べやすいの選んでくれて。
 お店に入ろうとした時、さっとドアを開けてくれて。

 ・・・もしかして。
 もしかしてやけど。
 あたし、大谷にめっちゃエスコートされてるよーな。
 振袖やと動きにくいなー思うと、何気に大谷がフォローしてくれて・・・

 動きにくいって。
 もしかして袴もそうなのかな。
 スーツの方が動きやすい?
 だから・・・。


「なぁ、やっぱりスーツの方が動きやすい?」
「そら、着慣れてる方が動きやすいわ」
「袴は慣れてないし?」
「まぁ、七五三以来やしなぁ」
「あたしのフォローするには、スーツの方が動きやすい?」
「そらそーや、オレが袴やったらおまえの面倒なんかみれ・・・・・・・・」
 大谷はハッとして振りかえり、リサの顔を見る。
 頬を真っ赤に染め、なにか言いたげな表情をしながら。



「ありがとう。大谷めっちゃ紳士やったで?」
「・・・・・・・しらん」
「あは」


 履き慣れない草履のせいか、いつもよりゆっくり歩くあたしのペースに。
 気がつくと大谷は自然に合わせてくれてん。

 そんなんさりげなーく優しいとことか。
 めっちゃ嬉しいんやで?
 誕生日とかクリスマスとか、成人式とか。
 同じイベントを過ごしてることだって、どれだけ嬉しいか。
 まぁ、大谷は、いつも本音隠してばっかりやけど。

 あたし、ほんとに嬉しいんやって。
 ・・・ちゃんと、伝わってるんかな。


 顔を赤くし、半歩先を歩く大谷を見ながら、リサはクスッと笑う。
 すると、それに気づいたのか、大谷が急に立ち止まる。
「・・・大谷、どしたん?」
「・・・っ」
 大谷は何も言わずに振り返り、それでいて目でなにかを合図する。
「なによ。なんか言いたいこと・・・」
「・・・・・・」


 気がつくとリサの視線の先に、伸ばされていた大谷の手。


「あ、バック持ってくれんの?ありがとー♪」
「ちゃう!!!」
 きょとんとした顔をしたリサを見ながら、大谷はガックリと肩を落とす。
「ほんまに、ほんまにおまえはアホや」
「な、なによ急に」
「・・・いや、オレが悪いねん。おまえがアホやって事、忘れてたオレが・・・」


 そう言うと。
 ふてくされた顔をしながら、大谷はリサの手をとり。
 指先を絡めて手を繋ぐ。


「・・・・・・・・・え・・・っと」
「なんや」
「やっぱりあたし、アホやんな?」
「そーや。アホで鈍感や」
「あははは」


 笑いながら、あたしが指先に力を入れると、ぎゅって握り返してくれる。
 あたしはやっぱり大谷のこと、だいすきやんな。
 だから、これからも。
 ずっとこうやって手を繋いでいられますように。
 ずっと、ずっと一緒にいられますように。



END


 (2008-1-14)

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