ラブ★コン二次創作・2
□約 束
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この小説は、rainballさんの小説「高校教師(1) (2)」の設定をお借りした番外編(?)になります。
なので、先に「高校教師」を読んでいただくと、わかりやすいと思います。
rainballさん、書かせてくださって、ありがとうございました!!
* * * * *
舞戸学園での大谷の教育実習が終わってしばらくたった頃。
リサは、大谷の部屋で晩ご飯を食べていた。
「あんな?今日おまえが来る前、中尾が遊びにきてん」
パスタをフォークに絡ませながら、大谷はリサに話しかけた。
「中尾っち??へー元気そうやった?」
大谷の親友・中尾っちは、リサにとっても大事な友人で。
久しぶりに聞く中尾っちの近況に、リサは興味深い顔をした。
「まぁ、相変わらずやな〜。で、そんとき言われてんけど」
「・・・え?なになに!?」
リサは飲もうとして手に持っていたコップをテーブルに置き、身を乗りだす。
「この部屋な。おまえの"匂い"がするんやって」
そう言うと、大谷はプッと笑った。
リサは意味が分からないのか、きょとんとした顔をして大谷を見た。
「・・・えっと、それはどういう・・・」
大谷は話を飲み込めてないリサに気づき、笑いながら答えた。
「おまえ、冷蔵庫のドアんとこに、うさぎのマグネット貼ったやろ?」
「あー・・・うん、貼ったよ?」
「風呂場にうさぎのおもちゃ、置いとるよな?」
「だって・・・アレは遊べるし可愛いやん!」
「洗面所にも、化粧品やらおいてるし。あと・・・」
ククッと笑いながら大谷はキョロキョロと部屋を見渡す。
「・・・えっと。それは、置くなってことなん?」
楽しげな大谷を見ながら、リサは苦笑いをしながら言った。
たしかに、大谷がひとり暮らしを始めて、ここに住むようになってから。
なんだかんだと、あたしも居ついちゃって。
あたしの持ち物とか、部屋のあちこちに置いてある・・・けど・・・
「ちゃうよ。ただ、そんなんを見た中尾からするとな・・・」
「・・・中尾っちからすると?」
大谷はニッと口を横に広げて笑った。
「おまえがこの部屋に住んでるように見えるんやて」
「ええっ!?」
リサは顔を真っ赤にして思わず叫んだ。
な、中尾っちなに言うてん!
あたしが大谷の部屋に住んでるとか・・・住んで・・・って。
・・・・・・・・・・。
・・・・・そりゃまあ・・・確かに。
大谷の部屋は駅前にあるから。
帰りが遅くなった時とか、家に帰らんとこっちに来てしまうことがたまに・・・ある。
そのまま泊まって出勤とかも、ある。
・・・てか、ここ数日は、家には帰っとらんでこっちにおる・・・。
大体、うちの親は、大谷のことめちゃくちゃ信頼してんから。
『大谷んちに泊まる』いうても、あたしの心配はせーへんし。
むしろ、『大谷君の邪魔したらあかんよー』とか、そんなん言うねん。
・・・一応あたしも年頃の娘さんやのに。
真っ赤になった両頬を手で押さえながら、リサはあれこれ考えていた。
大谷はそんなリサを楽しげに見ながら言った。
「・・・オレな?昔っから部屋はシンプルな方やねん」
「え?」
「あんまりごちゃごちゃせん方がすきやねん」
その言葉に、リサは冷や汗をかく。
シンプルがすきて・・・
前から、そうやないかとは思ってたけど。
でもこの部屋にあたしの荷物とか、うさぎグッズとか。
そんなんごちゃごちゃ置いてあるで・・・?
「・・・ご、ごめんな?あたしの荷物いろいろ置いてん・・・」
リサが両手を合わせて大谷に謝ると、大谷はリサに笑いかける。
「謝らんでええよ」
「でも・・・さぁ」
バツが悪そうな顔をするリサを見ながら、大谷はぐっと顔を近づけて言った。
「で、オレの好みを知ってる中尾からすると、この部屋は信じられへんて」
「中尾っちが?」
「・・・何よりな?」
大谷は声を殺して笑いながら、部屋の隅に置いてあるぬいぐるみを指差す。
「・・・ぬいぐるみ?」
「オレの部屋にぬいぐるみって、絶対ありえへんて笑われたわ」
それは、先日遊びに行った際に、大谷がリサに買ってあげた、うさぎのぬいぐるみ。
その日以降、リサは家に帰っていないため、ずっと大谷の部屋の隅に置かれていたのだった。
「・・・あー。えっと、ぬいぐるみは持って帰る・・・な?」
申し訳なさそうに頭をかくリサを見て、大谷はニッコリ笑った。
「別に置いとってかまわへんよ」
「ええの?」
「・・・ええよ。不思議なことに、最近こんなんもええかなー思てん」
「ぬ、ぬいぐるみが!?」
「ちゃう!オレのシュミやないものでも、部屋にあってもええかなって、思うようになってん」
そう言うと大谷は顔を赤らめながら、リサの頭をぽんと叩き。
食べ終わった食器をまとめて、キッチンへと運んだ。
* * * * * * *
「でも、リフォーム終わったら、ひとり暮らしも終わりやねんなぁ」
食器を片付け終わり、ソファに座ると、大谷はボソッと呟いた。
それを聞いたリサは、大谷の隣に座りながら、頭をポリポリとかく。
「その時は、さすがに荷物持って帰らんとアカンよなー」
「・・・オレんちに持って帰ってもええよ」
「え?」
リサは思わず驚いた声を出し、大谷の顔を覗きこむ。
「多分近いうちに、また家出るだろうし」
「・・・そうなん?」
「就職決まったらな。そしたら・・・」
「そしたら?」
「・・・・・・・・・・・・えっと・・・」
大谷は何か言いたげな顔をして、何度か口を動かす。
が、言葉が出てこない。
「・・・どしたん?」
「だから・・・・・・あのな?」
「うん?」
不思議そうに自分を見つめるリサの頬に、大谷は優しく触れた。
そして何度か深く深呼吸をし、リサの耳元に口を寄せると。
そっと囁いた。
そしたら一緒に・・・・・・暮らそーや。
その言葉を聞くと、リサは固まったまま、しばらく動けなかった。
大谷は俯き、リサから目線を逸らすも、頬を赤く染め。
そして、リサの手をとり、その手をじっと見つめる。
「む、無理にとは言わへんで?ただ・・・」
「・・・・・・・・」
「なんか、また離れて暮らすんやなぁ思たら・・・なんや、その・・・」
最後の方はしどろもどろになりながらも、大谷は一生懸命に言葉を探していた。
「おー・・・たに」
リサに名前を呼ばれて、大谷は顔を上げた。
「え?」
「今日って、4月やったっけ?」
「・・・おまえ、頭でも打ったんか?もう夏やで」
「だって、エイプリルフールかと思たから・・・」
「あほ。そんなんとっくの昔に終わっとるわ」
「じゃあ、またあたしのことからかってん?」
「何でそんなことせなあかんねん」
「・・・・・・・・・だって」
大谷はリサを抱き寄せると、額に自分の額をあてる。
そして、吐息を感じるほどの近い距離で、少し不安げな顔をする。
「・・・・・・アカンか?」
「な、なんで」
「だって、おまえ返事せーへんから」
「そんなん、びっくり・・・したから・・・」
「なら・・・」
「は、はい?」
リサは思わず甲高い声で返事をしてしまった。
大谷はフッと笑うと、優しい声で言った。
「オレの就職決まったら、やけど」
「・・・あ、あたしと大谷が・・・・・・やんな?」
「おまえ以外に誰がおんねん」
「そや・・・ね・・・あははは」
リサは顔を赤くしたまま、しばらく大谷の顔を見つめていた。
大谷もリサを見つめかえし、そして、リサに返事を促すかのように、ニカッと笑う。
「"はい" か "いいえ" だけ答えてみ?」
「・・・・・・・・・・・う、うん」
「"うん" やなくて」
「あ!そ、そやな!・・・・・"はい"」
その言葉を聞くと、大谷は満足げな顔をし。
「よし、約束や」
そして、リサの顔を覗きこむと、そっと唇を重ねたのだった。
「でも、その前に就職決まるかが問題やねんけどな・・・」
「あは。大谷先生、がんばってな?」
「おぅ!がんばるわ・・・・・・あぁー!!明日提出のレポート、忘れてた!」
「・・・・・・・・・ほんまに、がんばって・・・な?」
慌ててレポートを書く準備を始めた大谷を見ながら、リサはにっこり笑った。
近い将来、2人で過ごせる時間を思いながら。
END
(2008-1-22)