ラブ★コン二次創作・2
□お弁当。
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この小説は、rainballさんの小説「高校教師(1) (2)」の設定をお借りした番外編2になります。
なので、先に「高校教師」を読んでいただくと、わかりやすいと思います。
* * * * *
「大谷せんせー、お昼一緒に食べようよ!」
舞戸学園での教育実習、1週間目。
そう声をかけて集まってきたのは、先日大谷の部屋にやってきた4人の生徒だった。
ちょうどお昼にしようとしていた大谷は、生徒たちに引っ張られるようにして中庭に連れて行かれた。
そして、中庭の芝生で、それぞれが持ち寄ったお弁当を食べ始める。
が、お弁当箱の入った巾着を持ったまま、食べようとしない大谷を、生徒たちは容赦なく質問攻めにした。
「先生、それ手作り?」
「あー!彼女さんに作ってもらったん?」
「中身見せて見せて!」
「ええなぁ・・・愛妻弁当やん!」
「うわー先生、やっぱり彼女さんと仲ええんや!」
そんな、生徒たちの好奇心いっぱいの眼差しに耐え切れなくなった大谷は。
「オレの弁当は、どーでもええねんっ!」
そう叫んで、生徒たちに背を向け、巾着からお弁当箱を取り出す。
・・・・・・が。
「うっ・・・・・・・・・・・」
それは。
可愛らしいうさぎが大きく描かれた、ピンクの可愛らしいお弁当箱で。
「きゃー!先生、うさぎのおべんと箱やん!」
「めっちゃ可愛い!!!」
「なんや、やっぱり彼女さんに作ってもらったんや!」
「大谷先生って、そういうのがすきなん?」
生徒達の言葉を遠くに聞きながら、大谷は顔を真っ赤にし、慌てて巾着の中にお弁当箱を戻したのだった。
-------その日の夜。
「大谷。今日持ってったお弁当箱、洗うから持ってきてー」
キッチンで晩ご飯の片付けをしていたリサは、大谷に声をかけた。
大谷は神妙な顔つきをしながら、キッチンにやってくると、頭を何度もかく。
「・・・・・・・・・あ、あのな?」
「なに?どうしたん・・・?」
そんな大谷の態度を、リサは不思議そうに見つめた。
「・・・弁当、ありがとう。おまえにしては美味かったわ」
「いえいえ・・・って!おまえにしてはって、どういう意味なん!」
「まぁまぁ、それは置いといて」
「なによぅ、それ!」
ぷぅーッと頬を膨らますリサを見ながら、大谷は苦笑する。
「・・・で、弁当やけど」
「・・・も、もしかして・・・もう、いらん?」
内心、今日作ったあのお弁当はありえんと、リサは思っていた。
中身はともかく、お弁当箱がうさぎだった。
生徒の前であのお弁当箱は、かっこつかへんよなぁ・・・?
それでも、しょうがなかってん。
朝、お弁当を作り始めてから、箱がそれしかないことに気ーついたんやもん。
大谷の機嫌を窺うようにしながら、リサは後頭部をポリポリとかく。
「・・・作ってくれるのは非常にありがたいんやけど」
「・・・・・・・」
「頼むから、これ使ってくれ」
そう言うと、大谷は後ろ手に持っていた"何か"を、リサに差し出した。
「・・・なに、これ・・・」
「弁当箱」
「・・・大谷、新しいの買うてき・・・」
「とにかく!ええなッ!明日からはこれ使えよ!?」
リサの言葉を遮るように叫び、キッチンを出て行った大谷を、リサはきょとんとした顔をしながら見ていた。
「・・・ヘンなの」
そう呟きながら、リサは袋から新品のお弁当箱を取り出すと、しばらくの間それをじっと見ていた。
「・・・明日からて。またお弁当作れってことなん?」
そして、えへへと笑いながら、大谷が買ってきたお弁当箱を、ぎゅっと抱きしめたのだった。
しばらくして。
「なぁ。箱は大谷が買うてきたのでええけど、中身は可愛くしたらあかん?」
「中身を可愛く・・・?」
「たとえばーーーキャラ弁とか!」
「・・・・・・・・・それは、もしかして、うさぎの顔の形をした中身?」
「うんっ!」
大谷は深く溜息をつく。
「中身も、可愛くないので頼むわ・・・」
END
(2008-1-25)