ラブ★コン二次創作・2

□ひな祭り
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 3月3日はひな祭り。
 リサは大谷を部屋に呼んで、一緒に白酒を飲んでいた。
 最初はノリ気じゃなかった大谷も、白酒は結構好きだったのか。
 少し顔を赤らめながら、楽しそうに白酒を飲んでいた。

(さすがに高校卒業前のあたしに、ひな祭りはどうかと思うんやけど・・・)
 そう思いながら、リサはチラッと大谷を横目で見る。
(でも、このごろあんまり大谷とデートできひんかったし・・・いい口実やったかな?)
 そして、嬉しそうな顔をしながら、大谷に話しかけた。

「なぁ、ひな祭りは、女の子が主役なんやで。知ってる?」
「そんなん知っとるわ」
「なら、今、大谷の目の前にいるのは?」
「・・・はぁ?なにが言いたいねん」
「一応、あたしも女の子やってわかってるかなー思て」
 ケラケラと笑うリサに呆れた顔をしながら、大谷は「はいはい」と気のない返事をする。

「・・・でも、まぁ。確かにひな祭りの主役は女の子やしな」
 大谷はリサを見ると、ニカッと笑った。
「ほな、今日は大サービスで、お願いごときいたるで」
「・・・えっ?」
「一個だけやけどな。なんでも言うてみ?」
「ほんまに!?」
「おぅ。ほんまにほんまや」
 大谷は少し得意げな顔をする。
 そして、リサはそんな大谷を見つつ、嬉しそうに微笑む。


「で、お願いごとはなんやねん」
 それでも。
 急に真剣な表情をして、大谷がリサを見つめると。
「えっと・・・」
 そう言ったまま、リサは黙り込んでしまった。
 そして、なにか言いたげな顔をして、何度も大谷を見ては、顔を横にプルプルと振り、溜息をつく。
 大谷はそんなリサの様子を、不思議そうな顔をして見ていた。


「・・・やっぱり、やめとく」
 しばらくして、ぎこちなく笑いながら呟いたその言葉に、大谷は戸惑いの表情をみせた。
 いつもだったら、こういう時はその場のノリで何か言ってくるリサが、今日はなぜか控えめで。
 しかも、何か言いたげな顔をしつつ、それを自分に言わないことに、大谷は不満を感じた。

「そんなん言われたら、余計気になるわ」
「気にせんでええよ」
「無理。言えや」
「・・・ほ、ほら、白酒飲も?」
 それまでとは違って、無理に明るく振舞うリサを、大谷は真剣な眼差しで見つめていた。
 リサはそんな大谷から視線を外すも、その場から動けずじっと固まってしまった。

「・・・言わな・・・アカン?」
「アカン。なんで隠し事すんねん」
「別に・・・隠してるわけやないもん」
「せやったら、言えるやろ?」
 有無を言わせぬ大谷の口調に、リサはふぅと溜息をつくと。
 しぶしぶながら小声で言った。

「・・・すきって言うてほしかってん」
「え?なに・・・」
 小さくて聞こえなかったのか、きょとんとしたままの大谷を見ると。
 リサは瞬時に顔を真っ赤にし、白酒を勢いよく、どんどん口に運ぶ。
 
「ちょ、ちょっと小泉・・・」
 そして、その勢いに慌てた大谷がストップをかける前に。
 リサはコップを持ったまま、テーブルに突っ伏してしまったのだった。


*     *     *     *     *     *     *     *

 アルコールに弱いのは知ってたんやけど。
 まさか白酒でこんなんなるとは思わんかった。


 リサをベッドに運び終えた大谷は、溜息をつきながら、床に腰を下ろす。
 ベッドにはすっかり酔っ払って眠り込んでいるリサの姿。

 せっかく遊びに来てん。
 これじゃ何しに来たかわからんで。

 そう思いながら、大谷はリサの毛布をなおそうとし。
「おー・・・・・たに・・・」
 リサの寝言に、思わず動きを止めた。
 そして、クスッと笑いながら、毛布をかけなおし、リサの髪を撫でる。

 ・・・ほんま、こいつはお酒に弱すぎや。
 一緒に飲もう思ても、あっという間につぶれてまう。


『すきって言うてほしかってん』


 さっき、思わず聞き返してもうた。
 てか、急にこいつはなに言いだすねん。
 そんなん思ってたなんて、びっくりしたわ。

 ・・・せやけど。
 まぁ。あれや。
 わからんでもないねん。
 確かにオレは、あんましそういうの言わんし。
 言わんから、余計不安にさせとるのかもしれん・・・。

 オレって、なんやめちゃくちゃ情けない気ーする。
 彼女を不安にさせたまま、なんにも言わんて・・・


 少しなにかを考えながら。
 大谷はそっとリサに顔を近づける。


「・・・リサ」
 耳元でそっと囁くと、リサはなにかむにゃむにゃと寝言を言うも。
 起きる気配は全くない。
 人差し指で頬をつついてみる。
 それでも、少し怪訝そうな表情をしつつ、やはりリサは目を覚まさない。


「ほんまに熟睡してんのか?」
 そう言いながらも、しばらくの間、大谷は飽きることなくリサの顔を眺め。
 そして、優しげな笑顔を浮かべると、静かに囁いた。



「オレ、リサのことめっちゃすきやで」



 白酒に酔ってしまったのか、寝ているリサに安心したのか。
 大谷は独り言のように呟いて、そして深い溜息をつく。


 あーあ。
 寝てる時に言っても、しゃーないやん。
 ほんまに、オレってヤツは・・・

 そんな大谷に気がつきもせず。
 リサはただひたすら眠り続けていた。



 それでも------。
 数日後の卒業記念のDVD撮影で、まさかリサのお願いを聞くことになるとは。
 この時の大谷は、まだ知る由もなかった。



END


 (2008-3-3)

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