ラブ★コン二次創作・2

□ホワイトデー・スペシャル
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 3月14日ホワイトデー。
 デートの帰り道、大谷とリサは公園に立ち寄っていた。
 夜遅く、人影もほとんどない公園は、少し寂しげな印象で。
 それでも、大谷と一緒にいるだけで、リサは嬉しくてしょうがない。

 2人は外灯の真下にあるベンチに腰掛ける。
 すると、大谷は少し照れくさそうな顔をしながら。
「もう14日も終わりやねんけど」
 そう言って、リサにチケットを渡す。
「ホワイトデーのお返しや」
「・・・ありがとう!」


「海坊主・・・ホールコンサート・・・これって、チケット即完売してたヤツやん!」
 目を輝かせながら、リサはチケットを見る。
 海坊主は、大谷とリサの大好きなラッパーで。
 そのコンサートチケットともなれば、嬉しくないはずがない。
「これどしたん!?チケットとれんかも言うてたやん!」
「まぁ、オレほどのファンになると、色々ツテがあるねん」
「いやーマジで!めっちゃ行きたかってん!嬉しーー!」
「そうやろ、そうやろ」
 チケットを手に喜ぶリサを見ながら、大谷は満足げな表情をする。


「まぁ、去年と同じやねんけどな・・・」
「・・・そういえば、そうやった・・・けど」
 そう呟きながら、思わず2人は顔を見合わせて苦笑する。
 まだ、付き合う前だった、1年前のバレンタインにホワイトデー。
 忘れたくても忘れられないぐらい、色んなことがあって。


 去年のホワイトデーも、海坊主のライブチケットやったな。
 クリスマスとバレンタインをまとめたお返しやったけど。
 めっちゃ嬉しかってん・・・
 ・・・まぁ、ライブ前日に色々あってんけど。

 あれから1年しか経ってへんのに。
 今ここに、一緒におれるなんて。
 バレンタインやホワイトデー。
 そんなんイベント、一緒に過ごしてんなんて。
 1年前のあたしが見たら、めっちゃびっくりするんちゃうやろか。


 リサは大谷からもらったチケットを握りしめながら、えへへと笑う。
 大谷はそんなリサを横目で見ると、ふぅっと溜息をついた。


「・・・ホワイトデーって、なにお返しするんか迷うねん」
「え?」
 少し前屈みになりながら、膝の上で手を組み、大谷は呟く。
 リサはきょとんとした表情で、大谷の顔を覗きこむ。
「だって、キャンディーとか、クッキーとか、マシュマロとか、色々あるやろ?」
 その言葉に、リサは思わずクスッと笑った。
「・・・いま笑ろたやろ」
「えっ・・・?ちゃ、ちゃうで。確かにそうやなー思てん」
 ぎこちなく笑うリサに、大谷は少しふてくされた顔をする。

「・・・バレンタインは決まっとるからええかもしれんけど」
「そやな。チョコって決まってん」
「けど、ホワイトデーって、これってのがないやんけ。せやから、結局チケットにしてもうた」
 思わず、リサは大谷の顔をじっと見た。

 ・・・ほんまに。
 大谷って、ヘンなとこで生真面目ちゅーか。
 そんなん、迷わんでもええのに。
 なんでもええのに。
 大谷からのお返しやったら、どんなものやってあたしは嬉しいのに。


「・・・あたしはなんでも嬉しいで」
「へ?」
「気持ちがこもってれば、さらに嬉しい」
「そうなん?」
「うん」
 ニッコリ笑いかけるリサを見ながら、大谷は少し黙り込む。
 そして、フッと笑った。

「・・・ほな、お返しのおまけや」
 大谷はカバンの中からなにかを取り出す。
「なに・・・?」
「ちょっと待っとけ」
 大谷の手の中にある取り出したそれは、甘いイチゴ味のアメ、いちごみるく。
 リサはそれを目にして、思わずニコッと笑う。

 大谷のだいすきな、いちごみるくや。
 ・・・まぁ、あたしも、これが一番すきやねんけど。
 だって、めっちゃ甘くて、懐かしい味するやん。
 小さい頃から、お気に入りやねん。
 でも、ほんま、大谷とは好みが一緒やわ。
 こんなアメでも、すきなん種類は同じやねんもん。


 ニコニコするリサを一瞥しながら、大谷はそれをひと粒取り出すと、ポイッと口の中に放り込んだ。


「・・・おーたに・・・?」

 自分にくれるのかと思っていたリサは、不思議そうな顔をし、じっと大谷を見つめる。
 そんなリサに、大谷はニカッと笑いかけ。
 つられてリサも笑い返す。


 時は夜遅く。
 外灯の周りだけが明るい公園のベンチ。
 辺りには誰もおらず、聞こえるのは2人の声だけ。
 3月も中旬になると、少し寒さも和らぐものの。
 夜になれば、やっぱりそれなりに寒い。
 今日は薄着だったことを、リサは少し後悔していた。


「・・・寒いん?」
「へ?」
「なんや、手ー冷たいから」
 気がつけば、大谷はリサの両手を掴んでいて。


 ・・・おーたにの手、めっちゃ温かい。
 もうすぐ春やけど、やっぱり夜になると寒いねん。


 そんなことを思いながら、ぼんやりしていたリサの手を、大谷は軽く引き寄せる。
 すると、リサは身体のバランスを崩し、大谷に寄りかかりそうになる。
「わっ・・・・・あ・・・!!」
 慌てたリサは必死でバランスを保とうとするも、両手をさらに引っ張られ、大谷に寄りかかってしまった。
「ご、ごめっ・・・・」
 俯いて謝るリサを見ながら、大谷はその肩に手をまわす。


「なぁ」
「へ・・・?」
「顔、あげて」
 何の疑問も持たず、リサが顔をあげると・・・
 その瞬間、リサの唇に大谷の唇が重なった。


 触れるだけのキスを繰り返しながらも、大谷はリサの肩に置いた手に力をいれ、より強く抱きしめる。
 そして、誘うかのように上唇を甘く噛むと、リサは薄く口を開き。
 大谷は少し強引に舌先を差し込む。
 そして。
 いまさっき口に放り込んだアメを、リサに口移しする。


 しばらくの間、大谷はリサを離そうとはしなかった。
 まるで、丹念にアメとリサを味わっているかのように。
 口の中をコロコロ転がるアメ玉と、大谷の舌先に、リサはただ応えるだけで精一杯で。
 力の抜けていく全身を、大谷は支えるようにして抱きしめる。


 あか・・・ん。もう、わけわからん・・・


 気がつけば、アメはすっかり溶けきってしまい。
 名残惜しそうな顔をしながら、大谷はリサから離れた。


「美味かったやろ?」
「・・・・・・えっ・・・と」
 顔を赤くしながら、リサは大谷を見た。

 ・・・な、なんよ。
 急にこんなんするなんて!
 びっくりした・・・やん。

 大谷は、そんなリサの反応を楽しんでいるかのように、ニカッと笑う。
「気持ちこもってたやろ?」
「・・・え?」
「ホワイトデーのお返し」
「・・・・・・・」

 ホワイトデーのお返し。
 海坊主のチケットと、甘いイチゴみるくのアメ。
 ・・・・・・・
 こういうことして、大谷はあたしで遊んでへん?
 あたしの反応、楽しんでんねん・・・。


 リサは大谷から視線を外し、横を向く。


 ・・・けど。
 絶対に絶対に、ぜーーーったいに大谷には内緒やけど。
 こういう大谷も嫌いやないねん・・・。
 それって、やっぱり。
 ・・・惚れた弱み、なんかなぁ。


 こっそりと溜息をつくリサの顔を覗きこむと、大谷はニコニコした顔をして。
「もう一個、欲しい?」
「な、・・・・なにを・・・」
「だっておまえ、めっちゃ欲しそうな顔してん」
「ちゃ、ちゃう!そんな顔し・・・」
「素直やないなぁ」

 そう言うと、大谷はもう一度キスをした。



END


 (2008-3-14)

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