ラブ★コン二次創作・2

□なんとなく
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 ひとり暮らしをしている大谷の部屋でテレビを見ながら、リサは大谷の帰りを待っていた。
 時計を見れば午後6時過ぎ。
 窓の外は、かなり薄暗くなっていて。


 今日はバスケ部の練習試合や言うてたなぁ。
 せやけど。
 もうそろそろ、帰ってきてもええと思うんやけど・・・。


 大谷が小学校の先生となって数ヶ月。
 お互いが社会人となったせいもあって。
 それまでと比べると、会える時間は格段に減ってしまっていた。
 ましてや、リサは昨日まで仕事で徹夜続きだった。
 そのせいで、大谷とは一週間以上、会うこともできず。


 いくら電話しても、メールしても。
 物足りひん。
 やっぱり直接会われへんと・・・寂しいやん。


 仕事が早めに終わったこの日。
 リサは何よりもまず、大谷に会おうと、この部屋にやってきた。
 が、大谷は顧問をしているバスケ部の練習試合に、出かけたままで。
 驚かそうと、連絡もせずに部屋に来たことを、リサは少し後悔していた。
 ・・・けれども。
(まぁ。そのうち帰ってくるはずやし)
 そう思い直すと、リサは晩ご飯の準備にとりかかった。




 しばらくして。
 ちょうど晩ご飯の準備が出来上がった頃。
 ガチャガチャとドアを開ける音がして、リサは勢いよく玄関まで駆け寄った。
「おっかえりーー!」
 息をきらせながら駆け寄ってくるリサを見ると、大谷はクスッと笑った。

「・・・ただいま」
 楽しげな表情の大谷を見て、リサは首を傾げる。
「・・・あたし、なんかヘンなことでもした?」
「別に何もしてへんで」
 笑顔でそう言うと、大谷はケーキの箱をリサに差し出す。
「おみやげ、買うてきた」
「わー!ケーキや♪・・・あ、でも」
「ん?」
「・・・なんで、あたしが部屋におるの、わかったん?」
 ケーキの箱を大事そうに持ちながら、リサは不思議そうな顔をして大谷に訊ねた。

「・・・知らんかったで」
「へ?だってケーキ買ってきてるやん」
「そ、それはやなぁ・・・」
 大谷は動揺を隠しながらも、ドカッとソファに座ると。
 リサもその横にちょこんと腰掛ける。

「・・・もしかして、誰か連れ込む気ーだったとか!!」
 リサは頬を膨らませて、大谷を睨む。
 大谷は予想もしない言葉に、思わずぽかーんとした表情をした。
「・・・おまえ、ほんまにおもろいこと考えるなぁ」
「おもろいって・・・なにがよ」
「なんでケーキ買ってきたぐらいで、そんなん言われなきゃならんねん」
「でも、だったらなんで・・・」
 リサは大谷をじっと見る。
 大谷は思わず苦笑しながら答えた。
「・・・なんとなくや」
「なんとなく・・・?」
「おまえが部屋におるような気ーしてん」
「・・・なんでそんな気ーしたん?」
「なんでって・・・」
 そこまで言うと、大谷は一瞬、言葉を詰まらせる。

 ・・・・・・
 休日やったし。
 もしかしたら、部屋に来とるかなて思ったし。

 ・・・それに。
 もし部屋におらんくても。
 このケーキ口実に、会いに行こう思ってたなんて。
 そんなん言えるわけないやろ・・・


「まぁそれはそれで」
 大谷の言葉に、リサは納得のいかない顔をする。
「なぁ、なんでそんな気したん?」
「なんとなくや、なんとなく」
 しつこく聞いてくるリサに、大谷はやれやれといった顔をし、逆にリサに訊ねた。
「つーか、おまえこそ、なんで部屋におったん?」
「へ?」
「連絡もしてこなかったし。オレが遅くなるかもしれんとか、思わんかった?」
「そ、そう言われれば・・・そうやねんけど」
「・・・けど?」
「なんか、大谷まっすぐ帰ってくるような気ーしてん」
 真面目な顔をしてそう呟いたリサを見ながら、大谷はクスッと笑う。

「なんやそれ」
「えーだって、そう思てん、なんとなく」
「なんとなく・・・ね」
「・・・うん。それに、部屋で待ってれば、いつか大谷帰ってくるやん」
「遅くなっても?」
「うん・・・」
 リサはえへへと照れくさそうに笑う。
「だから、ここにおれば大谷に会えるかなー思ってん」
「そっか」
 そう言うと、大谷は優しげな眼差しをしてリサを見る。


 ほんまにこいつは。
 さらっと可愛いこと言いよる。
 そんなん言われたら、めっちゃ嬉しなるやんけ。


「今日はもう出かけへんの?仕事は?」
「出かけへんよ。資料の整理はあるけど」
「・・・そやったら、あたしがいると邪魔・・・やんな」
 少しがっかりした顔をしたリサを見ながら、大谷はもう一度クスッと笑う。
 そして、リサの頭をぽんぽんと叩いた。
「整理は明日でもええねん」
「ほんまにっ?」
 途端に嬉しそうな笑顔になるリサを見ながら、大谷は心に温かいものを感じていた。


 ・・・ほんまはめっちゃ疲れてんけど。
 こいつの笑ってる顔見ると、なんか癒されるっちゅーか。
 疲れてんのが気にならなくなるちゅーか。

 オレって単純なんやろか。
 どんだけこいつにハマってんねん・・・


「ご飯は?食べた?」
「んーまだ。どっか食べに行くか?」
「えへへ、実は作ってあるんよ」
「え、マジで!?」
 リサがいそいそとキッチンに向かい、食事の支度を始めると。 
 大谷の携帯に着信がはいる。
 大谷は携帯を手にし、ディスプレイをチラッと見ると、そのまま電源を切った。
 そんな大谷の様子に、リサは少し戸惑った表情を見せた。

「大谷、携帯・・・」
「え?」
「・・・でなくてええの?」
 食事の支度もそこそこに、キッチンから顔を覗かせながらリサが言うと。
「本日の業務は終了しました」
 大谷はわざとらしい声で笑いながら言った。
 そんな大谷を、リサは心配げな顔をして見た。
 そして、大谷の隣に腰掛けると、不安そうな声で言った。
「仕事やないの?平気?」
「・・・いまの電話、中尾やで。それに急用やったら、直に部屋にかかってくるから」
 そう言いながら、大谷は幾度となくリサの髪に触れる。
 その仕草に、リサはくすぐったそうな顔をして笑った。
「めっちゃ大事な用かもよ?」
「あーそれはありえへん」
「なんで?」
「そんなん決まっとるやろ」
「・・・え?」
「お前の方が大事やから」
「おー・・・たに・・・」
 頬を赤く染めたリサの腕をとり、大谷はそっと抱き寄せる。

「ご、ご飯食べるんやなかったの?」
「そうやなぁ」
 大谷はニカッと笑いながら、リサに顔を近づけると。
「メシよりも、先にこっち・・・がええかな」
 そう言って、唇を重ね。
 そのままソファに倒れこんでいった。



END


 (2008-3-31)

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