ラブ★コン二次創作・2

□願掛け
1ページ/1ページ

「なに食べる?」
 
 そう言うと、大谷はリサの顔を覗きこんだ。



 今日は、大谷の受験が終わって、初めてのデート。
 さっきまで美々ちゃんの急病で、なんだかんだとバタバタしていた二人は。
 少し落ち着いた今。
 まだ食べていなかった晩ご飯を食べに行こうと、街に出た。



 気がつけばもう9時。
 


「この時間て、意外と中途半端やねんなぁ」

 さっきからお店を覗いても、ラストオーダーは終了してしまった店ばかりで。
 さすがに、まだ居酒屋には入れない大谷とリサは。
 少し困った顔をしながら、周りをキョロキョロと見回す。
 すると、大谷が一軒の店を指差す。


「あ、お好み焼きあるで。あれにしよか」
「えっ・・・・・あー・・・・」
 
 あまり気乗りのしない様子のリサに、大谷は不思議そうな顔をした。



「お好み焼き、アカンか?」
「えっと・・・いや、大谷はそれでええんちゃう?」
「オレはって・・・おまえは食わんのか?」
「えっ・・・と、あたしはあんまりお腹空いてな・・・・」


 そこまでリサが言いかけた途端、ぐぅっとお腹が鳴る。


「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・あ、いや。ほらな?いつもお好み焼きばかりやし」
「おまえ、3食お好み焼きでもええ言うてたやんけ」
「そんなんいつの話してんよー。てか、あたしほら!ダイエット中やし!」
「それ以上痩せたら、胸なくなるやろ」
「そっ、そんなん関係ないやん!!!」


 少し真面目な目つきで、大谷はリサを見る。
 リサは大谷の視線から、思わず目を逸らそうとするも。
 その強い眼差しから、視線を逸らすことができない。



「食べたないんか?」
「そ、そんなことない・・・」
「ほな、お好み焼き、嫌いになったん?」
「そういう訳でも・・・ないです」
「腹、減ってんのやろ?」
「・・・・・・・・・・・うん」
「せやったら、なんでお好み焼き、食べんの嫌やねん?」

 リサは思わず半歩後ずさりをしようとするも、大谷に腕を掴まれて。



 そして。
 ふぅと大きく溜息を吐くと。
 しぶしぶ話し始めた。




「だからな?・・・してんねん」
「してるって、なにをや」
「だから・・・・」


 リサはチラッと大谷を見ると、もう一度溜息を吐く。


「・・・・願掛け」
「願・・掛け?」
「そう。いちばんすきなもん、願い事がかなうまで、食べへんの」
「すきなもんて・・・」
「お好み焼き」


 そう言うと、少しふてくされた顔をして、リサは大谷に背を向けた。


「・・・てか、願い事って何やねん」
「それは言えへん」
「なんで言えんのや?」
「言うて、もし願いが叶わなくなったら嫌やねん」
「・・・でも、めっちゃ気になるやんけ」
「アカンの!言うたら大谷ご・・・・・・・・・」


 ハッとして、リサは慌てて両手で口を押さえる。


「ご・・・ってなんや?」

 
 大谷はリサに詰め寄る。
 すごく興味津々の顔をして。


「ないない!なんもない!」


 口を押さえたまま、リサは何度も首を横に振る。
 それでも、大谷はあきらめようとしない。


「そこまで言うたんなら、言えや」
「アカン!」


 大谷はリサの腕を引っ張ると、真剣な眼差しで見つめる。


「おまえは、オレに隠し事すんのか?」
「な、なんでそんなん話になんのよ!」
「だってそうやろ」


 大谷の迫力に、リサはたじたじとなった。


「・・・・ほ、ほな言う。けど、明日までは言えん」
「は?」
「明日になったら言うてもええよ」
「なんで明日やねん」
「だって・・・」


 大谷を一瞥すると、リサはそのまま口をつぐみ。
 大谷は、これ以上聞いても無駄だと悟ったのか、やれやれと言った顔をして。
 傍にあるベンチに腰掛ける。


「そういや、言うてなかったけど。オレも願掛けしてんねんで」
「そうなん?」
「いちばんしたいこと、合格するまで我慢すんねん」
「・・・いちばんしたいこと?」



 自分の願いは言おうとしなかったリサでも、大谷のしたいことは気になるもので。
 目を輝かせながら、大谷の隣に腰掛ける。



「大谷のしたいことて、なんやねん?」
「明日になればわかる」
「わかるんや?なんやろ。あ、ライブ行くとか?」
「そんなんちゃう」


 そこまで言うと、大谷はリサの唇まで、あと1センチの距離まで近づき。
 指先でそっとなぞった。


「な、なによ・・・」


 息が触れるほどの距離に、心臓をドキドキさせながら。
 リサは動くこともできず、その場で固まる。


「・・・この続きや」
「つ、続きて・・・」
「合格したら、いちばんしたいことする言うたやろ」
「・・・・・・・えっと」


 ニカッと笑いながら、大谷はリサの手をとると、立ち上がって歩き出す。
 顔を真っ赤にしたまま、引っ張られるようにして歩くリサは。
 少し考えて。
 そして、えへへと笑うと、大谷に話しかけた。


「なぁ、大谷?」
「なんや」
「合格したら、お好み焼き食べに行こうな」
「へ?おまえさっき・・・」


 一瞬考え込んだ大谷は、その言葉の意味を察すると。
 繋いだ手を、より強く握りしめた。


「そうやな。合格したら・・・な」
「うんっ」



END


 (2008-4-23)

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ