ラブ★コン シリーズモノ

□first step おまけ
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「で、なんもなかったん?」



 そう言うと、中尾はグッと身をのりだし、大谷の返事を待った。
 大谷はそんな中尾から視線を逸らすと、大きな溜息ひとつ。
「・・・・・・」
 そんな二人の間に座っていた鈴木君は、無表情のまま大谷を見る。



 今日は、久しぶりに男3人で集まって。
 無事に大学合格をした鈴木君のお祝いをしていた。
 浪人して、1年がんばった鈴木君は。
 なんとか千春ちゃんと同じ大学に合格し、春からは大学生。



 それでも、今日の主役は、鈴木君ではなかった。
 なぜならば。



「・・・・・・・別にええやろ。オレと小泉のことや。おまえらには関係あらへん」
「大谷、めっちゃ冷たいこと言うなぁ。二人がくっつくように、色々お膳立てしたんは誰やねん」
「そんなんしるか!!」



 大谷は、数日前、リサと一緒に東京に行った。 
 それは初めての、二人だけの旅行であり。
 大谷がその旅行に対して、なにを期待しているか。
 中尾も鈴木君も、痛いほどわかっていた。



 ・・・だからこそ。
 旅行から帰ってきたこの日。
 話題の中心は大谷だったのだが・・・。



「大谷は、それでええの?」
「なにがや」
「今回も駄目やったんやろ?」
「駄目やったわけちゃうわ、ボケ!」
「え!?そうなん?」



 大谷の言葉に、中尾と鈴木君が目を見合わせる。



「なんかあったん?進展」
「大谷・・・駄目やなかったん?」
 二人からの、期待でいっぱいの眼差しを感じながら、大谷は溜息を吐く。



 いくら親友とはいえ。
 言いたくないこともある・・・





「あたし・・・大谷でなきゃ嫌やから」




 このリサの言葉は、大谷にとって今回の旅行の成果だった。
 他人が見れば、それがどうしたと言うかもしれない。
 けれども、大谷にとっては、この言葉だけが今の自分の支えで。
 おそらく、この言葉がなければ、すぐには立ち直れなかったはずで。




「駄目やなかったいう訳でもないけど、駄目やったいう訳でもない」
「は?????」
 その言葉の意味がさっぱり理解できない中尾と鈴木君は。
 大谷の顔をマジマジと見る。
 そして。



「・・・大谷」
「なんやっ!」
「がんばれよ」
「オレ、応援してる・・・」



 まるで可哀相な子を見るかのような表情で、二人から励まされた大谷は。
 少しふてくされた顔をするも。
 一瞬で表情を綻ばせると、鈴木君の背中をバシッと叩く。



「てか、今日は鈴木の合格祝いやで!?ぱーっといこうや!」
「そうやん!おめでとう」
「あ、ありがとう・・・」
 祝福の言葉にも、ポーカーフェイスな鈴木君を見ながら。
 大谷は何度も自分に言い聞かせていた。
 


 ええねん、ええねん。
 遅いかもしれへんけど、オレらはオレらやねん。
 無理して急ぐことあらへん。
 無理することなんか・・・




 それは、まだ3月になったばかりの頃。
 春の訪れを、わずかに感じ始めた頃のことだった。



END



 (2008-7-31)

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