ラブ★コン二次創作・3

□お墨付き
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 今日は、大谷の部屋でデートやった。
 昔やったら、家に遊びに行くのなんか、めっちゃ緊張して。
 部屋の中で二人きりとか、ドキドキしっぱなし。


 ・・・やったけど。


 どうも、最近はちゃうねん。
 妙に慣れ切った雰囲気。
 テレビを見ながら、大笑いしてる大谷。
 それを横目でチラッと見て溜息を吐くあたし。

 仲は良いねん。
 しょっちゅう電話するし、メールするし。
 休みの日にはデート行ったり、遊びに行ったり。
 喧嘩してるわけでもないねん。
 カラオケ行ったら、海坊主で超盛り上がりや。


 せやけど。


 そういう関係になってから。
 妙に安定してきたというか、落ち着いてきたというか。
 なかなか色っぽい雰囲気とは、程遠い今日この頃で。

 別にな?
 それだけが目当てな訳やないし。
 一緒におれるだけで、それはそれですごく楽しい。


 ・・・けど。
 最近では、手を繋ぐことすら、めったになくて。
 それって、もしかして。
 認めたくないねんけど。
 ・・・あたしの・・・せい?


 大谷に気づかれないように、あたしは再度溜息を吐く。


 二人きりなのに。
 家に誰もおらんのに。
 慣れ親しんだこの雰囲気。
 それはそれでかまへんとは思う・・・けど。


 テレビを見てケラケラ笑ってる大谷を横目で見ながら。
 あたしはペットボトルのお茶をゴクゴクと飲む。
 すると、大谷は少し驚いた顔をして。

「ど、どしたん?」
「なにが?」
「いや・・・すごい勢いで、飲んどるから・・・」
 そう言うと、あたしをじっと見る。
 その真剣な眼差しに、あたしは思わず胸がキュンとする。


 ・・・けれど。


「・・・なんか怒ってるやろ」
 こういう時の大谷は、意外と勘が鋭くて。
 あたしは慌てて弁解する。
「お、怒ってへんもん」
「ほー、怒ってへんのか」
「怒ってませんっ」
「ふぅーん・・・」
「・・・・・・」
 黙りこむあたしをチラッと見ると、大谷は溜息をつきながら頭をかき。
「・・・それやったら、これはなんや」
 そして、あたしの頬を人差し指でつつく。
「こーんなに膨れてん。おまえの機嫌はホンマにわかりやすいわ」
「・・・・・・」

 なにもかも見透かしたかのような大谷の人差し指を見ながら。
 あたしは力なく呟いた。
「・・・あたし・・・」
「え?」
「・・・女らしく・・・ないなぁて」
「は?」


 ・・・・・・・・・。
 だから、きっと。
 最近、そういう雰囲気にならへんのは。
 きっとあたしのせいやねん。
 あたしが女っぽいとこあらへんから。
 せやから。
 ・・・大谷は、そういう気になれへんねん・・・

 だけど。
 あたしだってがんばって女らしゅーなろう思て。
 でも、やっぱり。
 お笑い女の血は、どこまでいっても変わらへんのかな・・・

 すきになって。
 気持ちを伝えて。
 気持ちが通じ合って。

 あれから何年も経ったけど。
 この気持ちだけは、ちっとも変わらないのに。
 そう思ってんのは、もしかして。
 ・・・・・・・
 あたしだけ・・・?


 あたしは俯いたまま、黙り込んだ。
 大谷は不思議そうな顔をするも、スッとあたしの隣に近寄ってきて。
「なぁ・・・」
「な、なに?」
「こっち向いてみ」
 そう言うと、大谷は優しくあたしの頬に触れ、顔を上げさせる。
 そして真正面から、あたしの目を覗きこむ。


「女らしくないて・・・なんや?」
「・・・・・・・・」
「黙っとらんで、ちゃんと言うてみ?」
「なんも・・・ないよ・・・」
「ウソつけ」
 大谷はあたしの頬をペシペシと軽く叩く。
「・・・だって」
「・・・・・・」
「・・・最近、なんもせーへん」
「なにが」


 ・・・・・・
 もうええやん。
 そんなん・・・
 いちいち言わせんといてよ・・・


「・・・・・・」
「ちゃんと言えって」
 大谷の有無を言わさぬ口調に、あたしは少し投げやりに答える。
「だからっ!あたしが・・・女らしゅーない・・・から、なんもせーへん・・・」
「はぁ?」
「あたし・・・あたし・・・」
 目がどんどん熱くなる。
 あたしは涙がこぼれないように、必死で目を見開く。


 あたし、女らしくないし。
 可愛くもないし。
 ・・・せやから。
 大谷、そんな気になれへんのや・・・

 そのうち、飽きられて・・・
 こうして一緒にいることかて・・・
 アカンようになるかもしれん。


「えっと・・・」
 大谷は目に涙を溜めたあたしに躊躇しながらも、優しく頭を撫でる。
 そして、優しく抱き寄せると、背中をぽんぽんと叩く。
「・・・なんか、されたいんか?」
「・・・・・・」
 大谷は抱き寄せた身体を少し離して、あたしの反応を伺うように顔を覗きこむから。
 その真意が掴めず、あたしは思わず横を向いて、目を逸らしてしまった。


 な、な、なに言いだしてんねん・・・・
 な・・・なんやの・・・
 今まで・・・なんもせーへんかったくせに・・・
 なに、急に言うてん・・・

 てか、同情とか気まぐれやったら・・・
 あたしめっちゃミジメやん。
 ・・・・・・・・・。


「言うとくけど」
 大谷はあたしの髪を幾度となく撫でながら、ゆっくりと言葉を選ぶようにして話しだす。
「最近・・・オレ、めっちゃ我慢してん」
「な・・・にがよ・・・」
 あたしの言葉に、大谷はふぅーっと深い溜息を吐いた。

「会う度に、口説いてたらアカンやろ」
「へ?」
「そんなんばっかしてたら、おまえ、オレがそれ目当てやと思うやんけ」
「それ目当て・・・て?」
「オレは・・・そんなんしたいだけで、おまえと付き合ってるわけやないねん」
「おー・・・たに・・・?」
「だから我慢してん。けど・・・」

 そこまで言うと、大谷は全身の体重をあたしにかけてくる。
 咄嗟のことに、あたしは支えきることもできず、そのまま後ろに倒れこむ。
「い・・・たぁ・・・・・!?」
 後頭部を床にぶつけて、あたしは思わず叫ぶ。
 が、気づけば、大谷の顔が目の前にあって。
 その顔が微笑んだような気がしたのもつかの間。
 すぐに、大谷の唇が、あたしの額に触れる。
「・・・んっ・・・・・・・」
 くすぐったさに、あたしは思わず両手を伸ばして、大谷の身体を遠ざけようとするも。
 大谷はあたしの手首を掴んだかと思うと、強引に左右に開く。
 いつになく真剣な眼差しの大谷から、あたしは目が離せなくて。


 ・・・・・だって。
 あたしアホやもん。
 ちゃんと言うてくれんと、わからへん。

 あたしに色気がないから、なんもする気がおこらへんかったんちゃうの?
 我慢してたて・・・
 ホンマは、なんかしたかったん?
 ・・・・・・・・


「・・・けど、そんなん誤解されるんやったら、もう我慢せーへん」
「え・・・」
 あたしがなにか言いかけたのも気にせず、大谷の唇は額からまぶた、頬へと滑っていく。
 その刺激から、あたしは無意識に逃れようとして、首を左右に振ろうとする。
 が、大谷に押さえつけられたまま、動かすこともできない。

 大谷の吐息が顔に触れて。
 手首を掴まれて。
 身体の自由を奪われて。
 なのに、あたしは抵抗するどころか、全身から力が抜けていく。


 ・・・口に出しては言えへんけど。
 でも。

 あたしだって、すきな人の体温を感じたい。
 すきな人のことだけ考えて、なにもかも委ねてみたい。
 そんなこと・・・考えたりする時もあんねん。


「・・・やっぱりアカン?」
 大谷はあたしの顔を覗きこみながら聞いてくる。
「・・・・・え?」
「オレ紳士やからな。無理はせーへん」
 その言葉とは裏腹に、大谷の舌はあたしの頬をゆっくりと這う。
 あたしは生温かい感触に、身体を震わす。


「・・・ええやろ?」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・リサ」
 まるでそれが合図かのように。
 名前を呼ばれたあたしは、言葉で返事をする代わりに、大谷の首に手をまわす。
 あたしの首筋に顔を埋めた大谷は、何度もキスを繰り返し。
 器用にシャツのボタンを外していく。
 もう抵抗すらできない。
 大谷にされるがまま。

 あたしは、大谷に溺れていく・・・




 しばらくして。
 ベッドの中。
 まだはっきりとしない意識の中、あたしは大谷に抱きしめられていた。
「おまえなぁ、一人でアホなことばっかり考えんな」
「・・・・はい・・・」
「それに付きあわされるオレの立場も、考えてみ?」
「・・・・・・」
 大谷はキツイことを言いながらも、あたしを優しく抱きしめたままで。
「だって、あたしアホやもん・・・」
 少し甘えるようにそう言ってみると、大谷はクスッと笑う。
「ほんまや・・・」
「せやから、大谷もがま・・・・・・・」
 そこまで言うと、あたしは思わず言葉を止める。


 ちょ、ちょっと・・・
 あたし、なに言おうとしてんっ。
 今、思わずつるっと口から出そうになってんけど。
 そんなん言うなんて、あたしのキャラやないーーーーーっ。


「・・・なんや?」
 不自然に言葉を止めたのが気になるのか、大谷はあたしの前髪を弄りながら、聞いてくる。
「な、なんも・・・」
「・・・気になるから、ちゃんと言えや」
 答えるまで離さないというつもりなのか、大谷はグッと力を入れてあたしを抱きしめる。


 ・・・・アカン。
 こういう時の大谷は、しつこいねん。
 話、逸らせないねん・・・


「・・・だから・・・」
「・・・・・・」
「大谷も・・・・」
「オレも?」
 あたしはひと呼吸おくと、一気に言葉にした。
「大谷も我慢せんでええからって言いたかったんっ・・・・・」
 そして、表情を隠すかのように、大谷の胸に顔を埋める。

「・・・・・・あ、そう」
「・・・・・・・」
 恥ずかしくて大谷の顔をみれないあたしの後頭部を、大谷はぽんぽんと叩く。


 あー・・・もう恥ずかし死にする・・・。
 やっぱり、何度こういうことしても。
 恥ずかしいのは変わらへんよ・・・
 あー・・・恥ずかしすぎ・・・


「ほんまにええんか?」
 急に、大谷があたしの耳元で囁いてきたかと思うと。
 なぜか胸元に感じる手の感触。
「な、なに・・・が?」
「せやから・・・我慢しなくても・・・」
 そして、それは妙に色っぽい囁き方であり・・・。


 ・・・・・・・・・。
 えと・・・
 ちょっと・・・まさか・・・


 あたしはおそるおそる大谷の顔を覗きこむと。
 大谷は子供みたいな満面の笑みを浮かべていた。
「お墨付き、もろた様なもんやしな。うんうん」
「あ、いや、それは・・・」

 慌ててなにか言おうとするあたしの口を、大谷は唇で塞ぎ。
 そして、そのまま------。



END


 (2008-5-26)

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