ラブ★コン二次創作・3

□雨宿り
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「うわっ・・・・」
「雨・・・降ってきた!」

 ある日。
 街を歩いていた大谷とリサは、突然の雨に、近くにあった軒下へと逃げ込んだ。
 空は暗く、雨は肌に当たると痛さを感じるほどに強い。


『今日は夕方から天気が崩れます。お出かけの際には、折りたたみ傘を・・・』 
 リサは、今朝テレビで言っていた、お天気おねーさんの予報を思い出す。

 そういえば、確かに、雨や言うてた。
 ・・・けど、せっかくのデートやし。
 あたし晴れ女やし。
 大丈夫やと思てたのに・・・。。


「・・・どうしよ。傘持ってへん・・・」
「そやなぁ・・・こんだけ強い雨やと、動かれへんなぁ」
 激しさを増す雨。
 おまけに、風も強くなってきて。
 軒下に避難してるとはいえ、完全には雨から逃れられない状況。
 二人は互いに顔を見合わすと・・・思わずくすくすと笑いだす。
「せっかくのデートやのに雨って!ついてへんなぁ、うちら」
「ここ1週間めっちゃいい天気やったのに、今日に限って雨ってなぁ・・・」

 社会人となってしまったリサと、大学4年の大谷と。
 忙しさは今までと比べようもなく。
 会える時間も、ごくわずか。

 だから。
 こうして、雨宿りするだけの時間でも。
 二人にとっては貴重な時間。
 誰も邪魔することのない軒下で。
 他愛のないおしゃべりは続き。

 雨にも負けないほどの話し声、笑い声。
 会えなかった時間を埋めていくかのように、二人は話し続ける。


「あんな?仕事で行ったレストラン・・・めっちゃおいしそうやったん」
「へーどこの?てか、食べてこなかったんか?」
「だって、雑誌の撮影で使うレストランやで?めっちゃ高いんやもん!」
「・・・ほな、今度行ってみる?」
「行くーーーーっ!!大谷と一緒やったら行くーー!」
「せやったら、今度バイト代でたら・・・」
 そこまで言うと、大谷はいきなりリサの腕をとり。
「・・・っと。ほら、もうちっと、こっち寄っとけや」
 グッと自分の方へと引き寄せる。

「・・・へ?な、なに?」
「・・・肩」
 いきなり腕を掴まれてドキッとするも。
 人差し指でリサの肩を指差す大谷に、リサはきょとんとした表情を見せる。
「そっちの肩だけ、雨に濡れてん」
「あ・・・気がつかんかった・・・」
「アホやなぁ、そこだけびしょびしょやんけ」
 雨に濡れた肩を見ながら、リサはなぜか、大谷に掴まれた腕が熱くなった気がして。
「ほ、ほんまに、あたしアホやな」
 ここ数週間、会うこともできず。
 顔を見ることも、手を握ることすらできなかったせいか。
 こうして、ほんの少し触れ合っただけでも、ドキッとする自分に、リサは苦笑する。


 ・・・だって。
 こんな間近で、大谷の顔見んの、久しぶりやねんもん・・・
 嬉しくて、ドキドキしてまう。
 てか、大谷ってば、この前会った時より、髪の毛伸びてん。
 ちょっと雰囲気変わって・・・。
 かっこよくなった・・・



 ・・・相変わらず降り続ける雨も。
 僅かながらに、その量を減らしていた。
 そして、少しずつ。
 空は明るさを取り戻し・・・。



「もうすぐ・・・雨、上がりそうやなぁ」
「そやな」
 そう呟くと、大谷とリサは、二人して空を見上げた。
 しばらくの間、お互いに黙りこみ、空に顔を向けて。


 雨雲が、ものすごいスピードで流れ。
 それと同時に、雨はだんだんと弱くなっていく。
 隠れていた太陽は、ゆっくりと顔を出し始める。

 雨合羽を着た子供たちが、笑いながら道路を走っていく。
 そんな光景を見ながら、リサはニッコリと微笑む。


「なぁ」
「ん?」
「・・・これから、オレんち行かへん?」
「大谷の家・・・?」
「今日、家族みんな出かけとんねん」
「そうなん?」
「こないだ出た海坊主のライブDVD。見たい言うてたやろ?」
「うんっ!見たーーーーーーいっ」
 嬉しそうなリサの反応に、大谷は顔をほころばせて笑い。
「ほな、決まりな」
 正面を向きながら、そう言うと。
 大谷は、もう一度空を見上げる。


「ちょうど雨も止んだしな」
「そうやなぁ」
「・・・まぁ、こうして一緒に雨宿りってのも、たまにはええけど」
「うんっ、あたしも一緒におるだけで楽しかった!」


 雨が降ってようと、晴れてようと。
 街の中でも、家の中でも。
 漫才の如くしゃべり続けている時も。
 黙りこんだままの時も。
 大谷がそこにいてくれるなら。
 あたしはそれだけで、充分満足で・・・


「・・・・小泉」
「なに・・・?」
「・・・・・・」
 一瞬の沈黙。
 そして、リサが大谷の顔を覗きこんだ瞬間。
 柔らかいものが、リサの唇に触れる。
 ・・・それは、大谷の唇で。

「・・・・・・・・たまには、こーいうのもアリやろ」
 その言葉と同時に、大谷はリサの手をとり。
「行くで」
 そう呟きながら、歩き出す。


 赤くなった顔を見られたくないのか。
 大谷はリサの腕を引っ張るようにして、半歩前を歩いていく。
 そんな大谷に少し不満げな顔をするも。
 リサが絡めた指先に力を入れると。
 大谷は無言のまま、ぎゅっとその手を握り返す。


「・・・なぁ。大谷の部屋に行く前に、スーパー寄ってこ?」
「・・・ええけど、なんで?」
「どうせやったら、晩ご飯作って食べたいやん!」
「・・・小泉が作ってくれんの?」
「もちろん!・・・でも、簡単なヤツな?」
「おぅ!てか、オレも手伝ったろか?」
「ほな、いっしょに作ろー!!」


 そして。
 いつしか二人は、夕焼けに染まった街の中に溶け込む。
 そんなある日の、日常のヒトコマ。



END


 (2008-5-29)

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