ラブ★コン二次創作・2

□Christmas night
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「オレ・・・なんかしたんか?」
 その大谷の言葉に、リサはパニックになっていた。
 自分が落ち込んでいたせいで、大谷に誤解を与えてしまった。
 しかも、大谷自身がなにか悪かったと思い込んでしまっている。
「あ、あんな大谷・・・」
「・・・・・・」
 リサの問いかけに返事をするわけでもなく、大谷は真剣な眼差しでじっとリサを見ていた。
 その眼差しに、リサはますますどうしたらいいのか分からなくなった。
 そして、思わず立ち上がり、大谷に近寄ろうとする。

 ・・・その時。

 穿いていたスカートがテーブルに置いてあったグラスに引っかかり、床に落ちた。
 リサの真っ白なスカートと足に、中身のワインを目一杯こぼして。
「え?あぁ・・・!」
「・・・なに?どうし・・・」
「・・・ス、スカート、染み!」
「なにしてん、おまえ」
 咄嗟に状況を判断すると、大谷はバスルームからタオルを持ってきた。
 そして、ボー然とするリサを横目に、大谷は手際よくリサの足を拭き、そして言った。
「はよ、脱げ」
「は?」
「ええから、スカートはよ脱げ」
「ちょ、ちょっと何言うて・・・」
「アホか、なに誤解してんねん。すぐ洗わんと染みになるやろ」
「あ、は・・・はは、そうでした・・・」
 ワインでべとべとになったリサの足を見ながら、大谷は言った。
「とりあえず、おまえは足を洗ってこい」
「はい・・・・」
「オレ、スカートと床なんとかしとくから・・・」
 そう言うと、大谷はリサの顔も見ずバスルームに目をやる。
「えっ!ええよ、ええよっ、スカートはあたしが洗う」
「そんなん言うてる間に・・・」
「そ、そやな。洗ってくる・・・」
 そう言うと、リサは慌ててバスルームへ駆け込んだ。


 リサがバスルームにいる間、大谷は床にこぼれたワインの始末をしていた。
(オレ・・・クリスマスに何してんやろ・・・)
 床に転がっているグラスを拾い上げながら、大谷は深い溜息をついた。
(ほんまやったら、今ごろアホな話で盛り上がって・・・)
 そして、グラスをテーブルの上に置くと、大谷はベッドの上に寝転んだ。

 別に、喜んでもらおう思てたわけやない。
 オレがしてやりたかったから、しただけや。
 それだけ・・・のはずやけど。
 正直言うて、へこむ。
 ・・・オレ、うぬぼれすぎやったんかな。
 小泉がオレのことすきやって、当たり前のように思てたけど。

 そこまで考えると、不意にさっきの自分を見ていないリサの表情が頭に浮かび。
 大谷はそれを打ち消すように身体を反転させ、うつ伏せになった。

 小泉の気持ちがわからへん。
 あんなにオレのことすきや〜言うてたくせに。
 オレと一緒におるの嫌とか・・・思いもせんかった。
 そりゃあ、オレかて悪いとこはあるわな。
 バイトや大学が忙しいから言うて、あんましかまってやれなかってん。
 ・・・でも、それでもオレらは大丈夫やなんて、簡単に思てた。
 そんなんで壊れるほど、もろい絆やないって。

 天井をじっと睨みつけながら、大谷はずっとリサのことを考え続けた。
 去年のクリスマス。
 受験と小堀のせいで、リサとはすれ違いがあって。
 結局はクリスマス当日に仲直りできたものの、大谷はプレゼントすら渡すことができなかった。
 そのことが大谷はずっと気にかかっていた。
 だからこそ、今年はと気合を入れてバイトをしたし。
 リサの好きそうなシチュエーションやら、プレゼントまで考えた。


(・・・小泉はほんまに、オレのこと嫌になったん?)
 そう思いながら、大谷はバスルームに目をやる。
 そして立ち上がろうとした時、不意にリサの持っていた荷物が、大谷の目に入った。
(そういや・・・これ、小泉ずっと持ってたな・・・)
 小さめのペーパーバックからはみ出したそれは、誰が見てもクリスマスプレゼントとわかるもので。
 大谷も、最初に見た時、それがクリスマスプレゼントだと直感し、自分宛のものだろうと思っていた。
(でも・・・プレゼント用意できなかった言うてたよ・・・な?)
 少し前にリサが言った一言を思いだし、そっとそのペーパーバッグに近寄ると、大谷はそれを抱え上げた。
 そして少し考えてから、大谷はバスルームへチラッと目をやる。
(勝手に見んのは・・・いくらなんでも・・・・)
 そう思いなおし、バッグを元にもどそうとした時に、大谷はそれにカードがついているのに気がつく。
(・・・宛名書いてあるやん)
 その宛名を、大谷はじっと見た。


 ディイーエーアール エーティーエスユー・・・・・
 D・e・a・r  A・T・S・U・S・H・I  O・T・A・N・I・・・
 Dear ATSUSHI OTANI
 ・・・オレや。
 オレの名前やん。

 カードを手にしながら、大谷はさっきのリサの言葉を思いだしていた。


「あたし・・・プレゼント用意できんかった」


 あいつ、用意してへん言うてたやん。
 じゃあ、これはなんや?
 これ・・・・オレへのプレゼントちゃうんか?
 ちょー待て。
 さっぱり訳わからん。
 これは一体・・・


「洗ってきた・・・」
 カードを持ったまま大谷が考え込んでたちょうどその時、リサがバスルームから出てきた。
 大谷はハッとして、思わず手にしていたカードを隠す。
 そしてリサに目をやると、その姿に一瞬、目を見張る。
「あ、あんな?スカート洗ったら濡れてん。だから・・・バスローブしかなかってん・・・」
「そ、そうか・・・」
 バスローブ姿で、髪をまとめたリサの姿に、大谷は息を呑む。
(どうせこいつは、なんも考えんとこんなん格好してんのやろうけど・・・)
 そして、リサから目を逸らすと、大谷はベッドに腰掛けた。
 リサはそんな大谷の様子を気にしつつも、ソファに腰掛けた。
 そして、床がきれいに片付けられているのに気づき、大谷にお礼を言った。
「床・・・ありがとう。ごめんな。こんなんやらせて」
「そんなん別にかまへん」
 そう言うと、大谷はさりげなくカードに目をやる。
 そして、意を決したように話しだした。
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