ラブ★コン二次創作・2

□存在感
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 それから数日後。
 大谷は、ふと物音を感じて目を覚ました。
 昨日は夜中のバイトで、大谷が自分の部屋に帰ってきたのは、午前2時過ぎだった。
 それから倒れこむように眠り込み、熟睡していた。
 窓から差し込む光から察すると、もう昼近いのだろう。
 物音は大谷のいる部屋でなく、玄関の方から聞こえていた。

(誰か・・・おる。まさか・・・)
 大谷は一瞬、リサの顔を思い浮かべる。
 そして、すぐに顔を横にぶるぶると何度も振る。
(あいつ帰ってくんの明日の夜やん。てことは泥棒?)

 静かに立ち上がると、大谷は玄関へと向かう。
 そして様子を窺おうとした、その瞬間。
 ・・・なにかが角を曲がって、大谷の目の前に立った。

「うっわぁああ!!」
「きゃぁぁ!!!!」

 そこにいたのはリサだった。


*     *     *     *     *     *

「何でおまえがおんねん!帰ってくるの明日言うてたやん」
 部屋の真ん中で、向かいあって座りながら、大谷はリサに言った。
 その口調は、怒っているような、驚いているような。
 とにかく、リサが縮こまってしまうには充分な、迫力あるものだった。

「・・・あ、あんな?撮影が順調に進んだのと、台風接近中やったん・・・」
「・・・台風?」
「うん。で、予定してた便やと欠航しそうやったから、一日早く帰ってきてん」
「・・・だったら、なんで連絡せーへんかったん?」
「だって・・・なんか」
 そこまで言うと、リサは俯き言葉を濁した。

「・・・だって、なんや?」
「別に大したことや・・・ないけど」
「それやったら言えや」
 リサはチラッと横目で大谷を見ながら言った。
「連絡・・・しにくかってんもん・・・」
「・・・・・」 
「だって大谷、あたしおらへんくてもさびしない・・・言うてたし」
 リサの話す声は、だんだんと小さくなっていった。
「・・・早く帰ってきても、大谷は別に・・・なんとも思わんかなて・・・」
 そのリサの言葉に、大谷はなにも返すことができなかった。


「あ、ああ、そうや!あたしお土産持ってきたんやった。お菓子、食べるやろ?」
 そして、気まずい雰囲気をなくそうと、無理やり明るくふるまうリサを見ながら。
 大谷は胸がズキンと痛むのを感じていた。

 ・・・なんやねん。
 そんなん、オレが強がって言ったひとことやのに。
 せやのに。
 こいつはそれ信じて、めちゃくちゃ信じて。
 連絡しにくいとか、オレがさびしくないとか・・・・

 そして、気がつけば。
 思っていた以上にか弱く、細いリサの腕を掴み、引き寄せると、大谷は呟いていた。
「ごめん」
「え?」
 リサは思わず顔をあげて、大谷を見つめる。
 大谷も頬を赤く染めたまま、リサを見つめ返す。

「・・・さびしないとか、そんなんありえへん」
「おーたに・・・?」
「おまえ、めっちゃ存在感ありすぎやねん。やから、もしおらへんくなったら・・・」
「なったら・・・?」
「オレ、どうにかなってまう」
「え・・・・」
 大谷はそのままリサを抱き寄せた。
 
「・・・・・ウソやん・・・そんなん・・・」
「オレの言うこと、信じられへん?」
「だ、だって、さびしないって言うたやん。そやからあたし・・・」
 そこまで言うと、リサは目に熱いものを感じ。
 と、同時にぽろぽろと涙がこぼれた。
 大谷は少しリサから身体を離すと、その涙をやさしく拭う。


「傍におらんとさびしいのは、あたしだけなんかなって・・・思って・・・た」
「アホか」
「あ、あたしだけやないやん。大谷かてアホやん」
 涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら、リサは大谷の胸に顔を埋めた。
 大谷は優しくリサの肩を抱くと、泣く子をあやすかのように、幾度となく背中をさすり続けた。


「・・・なぁ」
 どのくらい時間が経ったのか。
 リサが泣き疲れて落ち着いてくると、大谷はニッコリと笑いながら言った。
「ここだけの話やねんけど」
「・・・・な、なに?」
 泣きはらした目をしながら、リサは大谷を見た。
「実はな?」
 そこまで言うと、大谷はリサの耳元へ顔を近づけ、そっと囁く。
「・・・オレ、めっちゃ腹減っとるんやけど」
「そ、そうなん?なら、お昼にし・・・」
 思いもしなかった大谷の言葉に少し戸惑いながらも、涙の乾いた目を何度か擦り、リサは立ち上がろうとする。
 が、大谷はその腕を掴む。
「・・・ただしな」
「え?」
「・・・腹減ってんのは、こっちやけど」
 その言葉の意味をリサが理解した時には、大谷の顔が間近にあって。
「あっ・・・・・」
 リサが吐息にも似た声を出すのと同時に、その唇は塞がれていた。

「んっ・・・」
 突然のキスに戸惑いを見せ抵抗するリサも。
 触れるだけのキスが徐々に深いキスに変わっていく頃には、大谷の首に腕をまわし。
 気がつくと、抱きあったまま床に倒れこみ、リサは大谷にされるがままになっていた。

 そして。
 長い長いキスの後。
 名残惜しそうに大谷はリサから唇を離し、リサは空ろな目をしたまま大谷を見上げる。
「1週間やから」
「なに・・・が」
「オレ、絶食してたようなもんや」
「・・・・・・・・へ?」

 大谷は無言のままリサの髪を優しく何度も撫でると、かすかに漂う甘い匂いに酔った。
 そして、その存在を確かめるかのように、リサの顔に幾度となく優しく触れる。
 最初は額。次は目・・・鼻・・・頬。
 ひと通り触れおわると、大谷は愛しげにリサを見つめ、軽く唇を重ねる。


「おーたに・・・」
「いまのオレ、めちゃくちゃ小泉が足らへんねんけど」
「・・・は?」
 意味が分からないせいか、ぽかーんとした顔つきのリサを見ながら、大谷はククッと笑う。
「おまえ、ほんまに鈍感」
「なっ・・・お、大谷みたいな鈍感に鈍感て言われたないもん!」
「オレかてお前みたいな鈍感に・・・って、そんなんどうでもええねん」

 こいつ。
 いまオレらがどんな体勢なんか、わかってへんな。
 完ペキ押さえ込み状態やで?
 なのに、なんでこんなに強気やねん。

「よーするに、おまえの好きなゲームやったら、HP1ぐらいの状態やねん」
「それは・・・確かに瀕死の状態やな」
「せやから。な?」
 そう言いながら、大谷はニカッとリサに笑いかける。
「今すぐ回復させなアカンやん?」
「うん・・・」
「てか、回復させてほしいんやけど?」
「・・・そ、それって・・・」
 リサが何か言い終わる前に、大谷が人差し指でリサの口を押さえると。

 そのまま。
 ゆっくりと、大谷の身体がリサに重なっていった。



END


 (2008-1-29)
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